たんぼLOVE「7月」
田んぼのむこうの空より、威勢のいい声がきこえてきます。
校舎を改築したばかりの、あの高校からでしょう。
梅雨のあい間を縫って、燕も人も、そして稲も前進中です。
「たんぼLOVE」に登場する田んぼは、一つではありません。
家を出て右手に行った田んぼと、左手にすすんだ処の田んぼ。
二つをまぜて書いています。
それぞれ「東のたんぼ」「西のたんぼ」と呼んでいますが
それは僕しか知らない名前です。
今年はどういう訳か、なかなか「東の田んぼ」に
水が引かれませんでした。
辺りには、新興住宅地が徐々にひろがっています。
この田んぼも、ついに売られてしまうのでしょうか。
しかし、6月の半ば。
水面には早苗の列が、ならんでいました。
植えられて数日後のおさなさ。
先に田植えを終えた「西の田んぼ」に比べれば、
頼りない苗ですが、一安心です。
もうじき100億に達する地球の人口。
生れてくることを罰することはできないし、
誰もはっきりとは口にはしませんが、
こんなにも人ばかり増えてどうなるのでしょう。
畦の雑草から、小指の先ほどの小さな蛙が
田水にとびこみます。
広いとはいえない田んぼを覗けば、
小さな世界にも、じつに多くの生き物が
存在できると実感します。
稲の根がしっかり張って、葉が青々としたら
もう早苗田ではなく、青田です。
青い稲に見えかくれして泳ぐのは、小鴨の群です。
親鴨さんは畔に立ち、こちらを見ています。
あらあら。
見張られてしまいました。
小鴨さんには何もしませんよ。