野に遊ぶ 二十四節気・白露
二十四節気を俳句の季題にする際、悩ましいのは
季節の名称と実際の季節感のずれではないでしょうか。
現在、暦は「白露」の候ですが、
野原がその名のように露もしとどかと言うと
う~ん。
そんなこともなく。
旅に来て白露は雨よ壺を見む 梨鱗
数年前の秋、熱海へ小旅行を。
美術館などを巡りました。熱海に来て海より壺ってヘンですね。
閑話休題。
早逝の俳人、田中裕明氏の俳句で、僕の目を惹いた作品があります。
たはぶれに美僧を連れて雪解野は 田中裕明
(「櫻姫譚」1992年)
「櫻姫譚」を発表した頃、
田中氏は、その作品が虚構に傾いていると批判を受けたそうです。
批判、かぁ……。
たしかに俳句で虚構に傾き過ぎると
実感が湧きにくいという難点がありますが。
僕にはとてもありありと情景が浮かびました。
日常を詠んでいればそれで良しとしながら
チマチマと閉じてしまった俳句より、
よほど豊かな肉づきを感じます。
人って色々だ。
ということで勝手ながらアンサー俳句(なにそれ?)を。
きちかうの枯野美僧を拾ひけり
桔梗の紫色が褪せた野で
その生まれ変わりのような美僧と出会ったよと。
田中氏の俳句の前日譚です。
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