フェス初参加でFEELCYCLEに沼ハマりして人生の景色が変わった
FEELCYCLEという暗闇フィットネスに通い始めてもうすぐ6年目になる。
こんなに長く続いた趣味は無かったし、こんなに自分が熱量を注ぐようなものも今まで無かった。それこそライフスタイルが変わるほどのものに出会うとは思ってもみなかった。
同僚に誘われて参加することになったLUSTER2019。
転勤で東京勤務になった直後に誘われ、とにかく目新しいことがやってみたくてFEELCYCLEのことはあまり知らないままに二つ返事で了承した。
トライアルレッスン中に足が攣って、それが悔しくて、格好悪くて、意地でも続けてやろうと思った。
それまで運動から遠ざかっていたツケを払いながら少しずつスタジオに足を運び、3ヵ月を経てLUSTER2019を迎えた。
時間は100分、コンセプトはRock。インストラクターの名前も分からないし、受講したレッスンの数も高々30回くらい、運動強度が高いプログラムは怖くて受けたことも無かった。
それでも少しずつ周囲で高まっていく「お祭り感」に、ちょっとだけわくわくしながら幕張メッセへ向かった。
実際のところ、LUSTER2019の全てを鮮明に覚えているわけではない。
もちろん自分の頭の中に残っているシーンはいくつかある。
近くのコンビニで水を沢山買ったこと、慣れない動作が出てきて戸惑ったこと、周りの雰囲気に圧されながら自分も声を張り上げたこと。
ただそういう断片的な瞬間の記憶は、ともすればいずれ色褪せる「東京勤務の思い出」の1つでしかなかったかもしれない。
楽しかったという漠然な思い出だけだったら、ここまでFEELCYCLEに通い続けることは無く、LUSTERのことも「そんなイベントありましたねぇ」と話のタネにするくらいだったかもしれない。
でも。今となってはほぼ毎日スタジオに通って年間300レッスン以上受けている。
それくらいにFEELCYCLEのことが好きだし、自分をそう変えるに足る瞬間が、LUSTER2019にはあった。
暗闇フィットネスが主催する音楽フェスという稀有なイベント
LUSTERは暗闇バイクフィットネス FEELCYCLEが開催する年に1度の大型フェスイベントである。
そもそも暗闇フィットネス自体が万人の知るところではない中で、そこが主催するイベントともなれば初耳の人からすれば「なにそれ?」でしかない。
運動しながらステージを見るというのはよくわからないし、まして80分間も身体を動かし続けるともなれば「?」の数は増える一方だろう。
今でこそ、お気に入りのプログラムがあって推しのインストラクターが沢山いる自分にとっては、何の楽曲が使われて誰があのステージに立つかというのも重要なファクターだ。
とはいえ2019年はそんなものは全く分からなかった。
ただ音響と照明が凄くてライブ感があった。
身体を動かしながら声を出すことが爽快だった。
段々と盛り上がる会場の熱気に引っ張られるように手を振り上げた。
きっと参加者の誰もが覚える感動を、自分も同じように受けていた。
それでも。自分を特段にこの世界に引き入れたのは「選曲」だったと思う。
”厄介な"過去の清算
東京に転勤する前、新卒から地方の事業所で働いていた。
自分の地元からはほど遠く、縁もゆかりもなかったが、入った会社の事務所があったからという理由で移り住んだ。
サラリーマンとはそういうものだと考えていたし、この性格ならまぁ、どこでもそれなりに楽しく過ごしていけるだろうと、そう思っていた。
でも自分の見通しはどうにも甘かったらしい。
閉塞感の絶えない職場だった。
働き方改革という言葉が生まれるより以前、サービス残業は前提条件だった。
強固な技術ヒエラルキーの中で、10年務めても技術屋としては半人前にもなれない。
経験と権利がイコールで直結するような世界。
入社して5年経っても勉強が足りない、何を学んできたのか、と言われていた。
最初のうちこそ「見返してやろう」とがむしゃらに走り続けたけれど、
どれだけ頑張っても指の隙間からスルスルと滑り落ちていった。
必死になればなるほど自分が消耗していった。
元より斜陽産業だった会社は、ますますの業績悪化でついに事業整理の対象となった。
それでも「どれだけ業績が悪くてもクビにはならないから」「どうせ今回も親会社がなんとかしてくれるよ」そう言葉にする上司や先輩が何人もいた。
悔しかった。きっとあなたたちも、昔は会社を良くしようと思っていたんじゃないのか。ライバル企業に負けじと頑張っていたんじゃないのか。
どうして変わろうと思わないんだ。どうして変えたいという願いを勉強不足の一言でかき消してしまうんだ。
そういう憤りを感じていたし、いずれ自分も麻痺して"そっち側"に行ってしまうのではと恐怖もした。
自分の中に澱のように溜まってゆく「こんなはずじゃなかった」という想い。抜け出したくても抜け出し方が分からない悲壮感。過去の自分がした選択への後悔。
苦しくなかった思い出が無いくらいに暗く苦い日々。
多くの社員が現状維持を望む中、異動希望を出した。
自ら選んで入ったはずの職場は一刻でも早く離れたい場所に変わっていた。
幸い、業績悪化で人余りになっていて、異動希望はすんなり通った。
ここで何かを成し遂げたいと理想に燃えていた自分への後ろめたさと、
こんなにも苦しい思いの元凶となった浅慮だった自分への怒り、
結局なにもできなかったことへの無力感。
そういうものに全部蓋をして新天地へ発った。
自分の人生には不要な5年間だった。黒歴史なんか無かったことにしてリスタートするんだと言い聞かせた。
それから数ヶ月後にLUSTER2019に参加した。
何が何だかわからないけどとにかく楽しい。これからこういうイベントも沢山行ってみよう。
リスタートにぴったりだ。
10分も経たずに夢中になった。
360度のステージの中央に大型ビジョンがあって、カメラ映像と演出が交互に映される。
音楽に乗せて身体を動かすことが純粋に楽しくて、ステージとビジョンに目線を行き来させながら脚を動かした。
少しだけ、曲調が大人しくなった。
アコースティックのイントロでスタートしたその曲はGreen DayのGood Riddance。
100分間の中のたった2分半。
それでも、自分にとっては忘れられない2分半になった。
上がったボルテージをあえて下げるような構成は、ステージビジョンに表示された歌詞を正面から受け止めるには十分に自分を引き込んだ。
あ、これで良かったのかも。
全力で走ったことも、転んで立ち上がれなかったことも、記憶から消そうとしていたけれど。
それが、それこそが自分の糧になっているのかも。
過去の選択を呪い、苦い思い出の全てに蓋をしたつもりの自分にとって、
「不確実な人生も最後にはきっとこれで良かったと思える、そう願う」というメッセージは、
あの会場の熱気すら一時的に忘れるくらい、
ストレートに深く、自分に響いた。
だからFEELCYCLEが好き
もちろん、受け取り方は人それぞれで。
本当にたまたまあの時のあの曲があの日の自分に刺さっただけ。
それでもLUSTERには間違いなく「あなたらしく」というメッセージが込められていると思う。
FEELCYCLEが掲げている言葉がある。
きっと普段のプログラムも、スタジオのレッスンも、特別なイベントのLUSTERも、中心にあるのはこの言葉だと思う。
ひとつひとつの曲と、それを紡いだプログラム、そこに込められたメッセージ。
全部を意図通りに受け取ることはできなくとも、自分なりの受け取り方で。
それが自分にとって一歩前に進むエネルギーになる。
そうやって少しずつ自分の過去を認められるようになった。
LUSTER2019があったから今もFEELCYCLEに通っている。そんな自分を昔より好きでいられる。
LUSTER2022は一緒に参加してくれる仲間が増えた。
こんな自分の好きを共有できる人がいる。
だから私は、LUSTERが、FEELCYCLEが好きなのだ。
了