フードデリバリー配達員の交通違反、人情味ある罰則
《福福の知りたい広州!vol.17》
【 広州、電動スクーターの交通違反を厳しく取り締まり 】
中国でも市民生活に欠かせない存在となっているフードデリバリー。
便利な一方、街なかを縦横無尽に走り抜ける配達員の電動スクーターによる交通違反が頻発しており、広州市はその取り締まりを強化しているとのこと。
『廣州日報』2021年8月2日
「广州严查电动自行车交通违法行为」より
広州市は今年3月から、道路交通秩序の改善、電動スクーターの管理強化、市民の快適な移動環境の確保などに力を入れている。広州市交通警察や各区政府、区公安分局などの関連部門は、毎月定期的に全市統一の取り締まりを実施し、特にフードデリバリー配達員の交通違反に対する罰則として「5つの選択肢※」から一つを選ばせるなどして、違反行為に対する補導、教育を強化している。
統計によると、今年広州市では35回の一斉取り締まりが実施された。3万5千人の人員が配置され、6万5千件のフードデリバリー配達員の電動スクーターの違反行為が処理された。取り締まり強化開始から7月9日までに、電動スクーターに関する各種交通違反行為は30万件に上り、前年同期比290.12%増となった。
6月末までに、市内の交差点における交通ルール順守率は86.85%、バイクのヘルメット着用率は71.92%で、取り締まり強化前に比べてそれぞれ14.95%、38.78%増加した。
現在、広州市では依然として電動スクーターによる交通事故が多く発生しているため、引き続き取り締まりの強化と、管理の最適化に重点を置くとしている。
※罰則"5つの選択肢"
1.20~50人民元の罰金
2.交通安全の法規条文を一回書き写す
3.交差点で警察による交通秩序維持の補助ボランティア及び「交通警察との約束」に署名
4.交通安全ビデオ(20分)視聴
5.微博や微信のモーメンツに自身の違反行為や位置情報を投稿し、友達から20の「いいね!」をもらう
【 福福より 】
廣州日報の記事には、罰則「5つの選択肢」についての詳しい記載が無かった為、他の記事を探してみたところ、興味深い背景がありました。
雨の日も風の日も、暑い日も寒い日も時間に追われ配達に勤しむ配達員。彼らの交通違反に対して一律に「罰金」を科すと、その経済的損失を補う為にさらに無理を重ねたり、警察のいない道を選び違反行為を重ねるなどの可能性もあるので、配達員の事情を考慮し且つ違反行為に対する教育的効果を高める為に、このような選択性の罰則にしているとのこと。
ちなみに、記者によると「2.法規条文の書き写し」を選択する人が大多数だったとのことです。
ライチ局長、市内を移動する時など、交通関連のマナーなど何か日本との違いはありますか?
【 ライチ局長より 】
福福さん、今回は面白いところに目をつけましたね!
電動スクーターに関することですが、確かに、中国の都市では、現在電動スクーターが増加していて社会問題になっています。
原因は、福福さんが書いてくれているようにフードデリバリーなどのネット宅配サービスなどが充実したことで、その配達員が増加したことにあります。配達員は、電動スクーターを駆使して、街中を縦横無尽に駆け回っています。
こうしたサービスは、配達時間の目安表示があり、これを過ぎないように配達することが求められます。利用客からは、配達員の位置を常に地図で確認することもできます。
しかし、注文は食事の時間にピークを迎えます。配達員は、できればその短い時間で効率よく多くの仕事をこなしたいと考えます。そこで、配送可能な時間内ギリギリでたくさんの注文を受けようとします。すると、路上には、常に時間に追い立てられている配達員が溢れかえることになるのです。
元々、中国の路上には、一般人が乗る電動スクーター、一昔前から急増したシェアバイク、ネット商品を届ける宅配便などの車両が溢れていました。こうした車両は、逆走してくることもあるし、歩行者が出てきたり、車が曲がってきたりで、運転は気を抜けない状況です。そこに、フードデリバリーが加わりました。
時間に追われるフードデリバリーの配達員は、運転中に電話をしたり、地図を見たり、信号を無視して突っ込んできたり、マナーが良いとは言えません。当然、事故もたくさん起きます。そして、取り締まりが厳しくなる…、という訳です。
また、広州では、最近、交通警察から電動スクーターの使用可能エリアを制限する意見書が出され、市民に意見を募っています。今後は、さらに自由に電動スクーターに乗りにくくなるのかもしれません。
とはいえ、問題の一つには、広州のように急速に発展した超巨大都市では、道路スペースが確保できておらず、側道が狭く通りにくい箇所が多いということもあります。一方、そもそも人口が多いので、走行する自動車の交通量も多く、頻繁に渋滞も起こっています。
逆に、中小都市では、道路に余裕があり、電動スクーターが走行しやすい環境があります。そうなると、こうした都市では、シェア電動スクーターが大いに普及することになります(正確には”助力車”)。これは免許の取得は必要なく、路上に置かれているシェア電動スクーターのQRコードをスキャンするだけで使用が可能です。最高速度は20km/時、2元(35円)/30分という金額で気軽に利用できます。
これ、私も旅行で地方都市に行き、効率よく街中を移動する時に、本当に重宝します。地下鉄で移動すると、街中の景色が楽しめないのですが、電動スクーターだと、街中の風景の変化や、人々の普通の営みを横目に見ながら颯爽と駆け抜けることができるのです。
便利なサービスの発展と、社会全体の秩序維持。このバランスをどうとっていくのか。これは近年、中国がずっと向き合っている課題であり、きっと日本も他人事とは言えない課題ですね。
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