広州市、コロナ感染拡大と大学入試
《 福福の知りたい広州!vol.14 》
「広州からやってきた高考の答案」
中国では、毎年6月7、8日(広東省は9日まで)に、全国統一大学入試「高考」が行われます。
過酷な競争で知られる「高考」は、受験生やその親にとって人生を左右する一大イベントです。
さて、この「高考」を目前控えた5月後半、広州市では9カ月ぶりに新型コロナウィルスの感染者が確認され、広州市政府は広範囲の封鎖管理や大規模PCR検査の実施など感染対策の臨戦態勢に突入しました。
今回は、「高考」実施にあたり、広州市が講じた対策の一部を広州日報の記事よりご紹介します。
『廣州日報』2021年6月10日
「一份来自广州的高考答卷~广州坚持以最高标准、最严要求、最强保障统筹做好疫情防控和考务管理~」より
6月9日午後、2021年広州の「高考」が幕を閉じた。
感染拡大阻止の重大な局面にある広州は、5万人超の受験生と共にこのかつてない状況下での「大試験」をやり遂げた。
<5月21日、一人目のコロナ感染確定>
・5月24日、広州市は全ての受験生と試験関連スタッフに対し健康コードアプリに
よる試験前14日間の健康観察を要請
・濃厚接触者や封鎖管理地域などの受験生に対応する試験会場を新設、増設
・5月31日~6月11日、市内の高校1、2年生は登校せずオンライン授業。高校3年
生のうち寮生は封鎖管理、自宅生は登校せず自宅学習
・「高考」実施前、試験関連スタッフ7000人超のワクチン接種100%完了。全試
験会場の環境サンプルPCR検査実施済み
・受験生及び試験関連スタッフに対し、2回のPCR検査を実施
・PCR検査陽性の受験生2名は、隔離病棟に設置された試験会場でそれぞれ受験
・中、高感染リスク地域の819名の受験生に対し、専用車による一対一での送迎を
実施。各車両消毒を行い、運転手は防護服を着用
・濃厚接触者または準濃厚接触者に該当する受験生は141名。濃厚接触者の受験生
は1人一室、準濃厚接触者は4名以下一室で受験
・試験会場には感染防止対策の専門スタッフと医療スタッフを配置、救急車配備
・「高考」終了後、全ての受験生及び試験関連スタッフに14日間の健康観察を要
請
【 福福より 】
変異株による脅威も拡大する中で実施された今回の「高考」。
「受験を希望する受験生が、一人も欠けることなく受験できるように」
廣州日報の「高考」関連の記事の中に、何度も出てきた言葉です。
今回ご紹介したのは広州市が講じた対策の一部ですが、最初の感染者発覚から2週間ほどの期間で、これらが次々と実行され形になっていくスピード感に圧倒されました。
ライチ局長、「高考」の期間、市民に対して何等かの協力要請や交通などの規制はありましたか?
また、最近のコロナ関連の状況はいかがでしょうか。
【 ライチ局長より 】
中国では、毎年この時期の大きな話題の一つが、この「高考」です。
福福さんが紹介してくれているように、中国の教育熱は大変なものです。胎児教育から始まり、幼児教育、各種のお稽古、毎日の宿題、補習授業などなど。親も子供も大変なストレスと負担が強いられる中、日々の教育競争が続きます。子供の教育環境が少しでも良くなるなら…、と有名学校がある校区の高価な不動産を借金して購入している姿は、まさに「孟母三遷」の教えの通りです。
そして、その長い教育競争の一つのゴールが「高考」になります。これは、正に現代版「科挙」になぞらえられる程で、一発勝負のこの試験によりその後の運命が左右されます。多くの中国人の中に、この10数年に及ぶ苦しい受験戦争、もしくは子供を勉強に駆り立てた苦々しい記憶があるので、この時期の「高考」のニュースは、どこか人ごとではなく、多くの方からの関心が寄せられるのです。
そんな中、広州での高考の様子は、今年の高考関連ニュースでも特に注目を集めた内容でした。というのも、5月21日、試験本番まで2週間あまりのタイミングで広州市内で感染者が出た当初から、多くの人が関心を持っていたのがこの「高考」の問題でした。もし我が子が感染して受験ができないような事になったら…、受験生の子を持つ親は気が気ではなかったのだと思います。
その後、封鎖管理されるエリアが増えてくると、この状況でどのようにして試験環境を整えるかという対策が検討されました。そして、その結果が、今回福福さんが紹介してくれている一連の内容です。市民への協力要請やこのための交通規制というのは特になかったのですが、個人的に「すごい」と感じたのが、下の二つの対策です。
中、高感染リスク地域の819名の受験生に対し、専用車による一対一での送迎を実施。各車両消毒を行い、運転手は防護服を着用
これは、広州交通、教育、衛生健康、公安部門が協力して対応にあたりました。819名の学生に1対1ということは、それだけの車両が必要になるということです。隔離された場所から試験会場まで、受験生一人一人を点と点で繋いだサービス。試験会場で、受験生の試験終了を待つタクシーの列は圧巻でした。
PCR検査陽性の受験生2名は、隔離病棟に設置された試験会場でそれぞれ受験
また、こちらの対応では、2名の高校生が無事に入試を終えれるように、病院の医療関係者が全力をあげてサポートし、特別に用意された個室で、他の会場と同じタイミングで同じ試験が受けられるように手配されました。また、彼らの心理状態などに配慮し、看護師が手書きの漫画で学生たちに注意事項や応援メッセージを送っており、一丸となって学生を見守る姿に多くの感動を与えました。なお、会場には、他の会場同様に監視カメラが設置され、回答が終わった答案用紙は、病院側で入念に消毒をし、採点官に渡されました。
この他にも、毎年この時期には、事情があって試験に遅れそうになっている学生を警察官が送ってあげたり、子供を見守る親の話が話題になります。
中でも一つ、試験会場の前で子供の帰りを待つ一人の母親のインタビューに心惹かれました。その母親は、18年前に広州でSARSが発生した時、自分が感染してしまい、その状態で双子の男の子を出産したそうです。いろいろな困難があったようですが、その双子の子供は、その後順調に成長し、今年、奇しくも新型コロナが再燃する広州で高考を受けているそうです。困難を乗り越えてきた自信からか、母親は、心配しながらも力強く笑っていました。
このように、中国では、高考とそれを立ち向かう親子を全力で応援しようという雰囲気があります。政府が一部の学生にタクシーを用意してあげたり、警察が先導したり…というのは、日本で行うと賛否両論あるところかもしれませんが、私は、それを許容できる優しさは良い一面だと思っています。
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