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宝箱をあける瞬間

当時リリースされたばかりだった宇多田ヒカルのBeautiful worldをイヤホンを分け合って一緒に何度も聴いた。ふたりで涙のふるさとのMVを何度も見ながらああでもないこうでもないと言い合った。ギターを弾きながら青いベンチを歌ってくれた。大好きだって言ってたハルジオンをライブで一緒に聴くことは叶わなかったけど、幕張では手を繋いで一緒にいるつもりで聴いたよ。

終電がなくなるまで遊んだ深夜2時ごろ。ひとりでタクシーに乗り、寝そうになりながら窓の外を眺めていた。流れる外の景色。窓から懐かしいものが見えて一気に目がさめた。老舗のゲーム屋だ。古くなった看板に、取り扱ってるゲームの名前が連なってる。その中に「ドリームキャスト」の文字。

「ドリキャスっていうハードがあったんだよ。結構好きだった。」

幼かった私はドリキャスを知らなかった。あの日教えてもらった思い出のハード。
本当に何気ない会話だった。これといってそこから話が発展したわけでもなかった。なのに。何気ない至る所に思い出が散らばっていて、無意識に押し込められたきらきらしたものがときどき勝手に溢れる。

自分が意識していなかったことでも、ふとその思い出に触れた瞬間、思いだすあの日の空気のにおいがする。
つらいときも、引き戻されるその瞬間がある限り本当の自分に戻れる。思いだすたびに涙が出て、そしてまた元気をもらえる。ここにいなくてもずっとここにいる世界一の友。

あの時代に聴いていた音楽はもっともっとある。ふたりで分け合った音楽は、今はひとりで聴くしかない。

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