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四節 EとKと、机の下の僕
小学2年生の時のお話。
当時のクラスメイトに、Eくんというちょっと乱暴者な男の子がいた。
僕自身は彼に危害を加えられたことはなく、単純にちょっと面倒くさいけどまあそんな悪い奴ではないな、程度の認識だった。
時期は7月だったと思う。夏だけどまだ比較的涼しい朝に、その事件は起きた。
三節で紹介した、僕に溶連菌を移してしまったクラスメイトのKくん。その日、彼は朝のホームルームが始まるまでの時間、大きなサイズの「崖の上のポニョ」の絵本を読んでいた。
そこへ、Eがやってきて、何やらちょっかいをかけ始めた。
そんなもんの何が面白いのか、や、なんか言い返してみろよ、とか、そんな感じでいちゃもんをKにつけはじめた。
そんなEに対し、Kは眉間に皺を寄せながらも、無視してポニョを読んでいた。
しかし次の瞬間、
""""バチ"ィッッ""""
とんでもない音が響いた。
この音の正体は、EがKの読んでいたポニョを奪い、そしてそのポニョで思い切りKの顔を引っぱたいた音だった。
Kの顔は、ポニョで引っぱたかれた衝撃で、赤いを通り越しむしろ一瞬白くなっていた。フルスイングで引っぱたいてたもん、めちゃ痛そうだった。
そしてKはついにブチ切れ、なんと水筒を振り回しEを殴り始めた。
一方、その時の僕はというと、喧嘩が勃発する数秒前に、素早く危機を察知し、机の下に入り、身の安全を確保した上で震えながらしっかりと喧嘩を見ていた。
なんならEがKにいちゃもんを付け始めたあたりから机の下に入る準備をしていた気がする。
この頃から極めて小心者ですね。
かっこわるいです。
Kの水筒での殴打に対抗してEが椅子を投げ始める。Kがそれを間一髪で避ける。そしてすぐさまEがKに飛びかかる。喧嘩は打撃戦からグラップリングへと移行していった。
水筒が舞い、椅子が飛び、果てには組技で暴れ馬のように荒れ狂う2人の広範囲に及ぶ喧嘩により、夏の麗らかな朝の教室は悲鳴で溢れた。
結局、後に先生が来て喧嘩が終わりを迎えるその時まで、終始、机の下で震えていた僕だったのだが、今思えば、仲裁は無理にしても喧嘩が起きそうだと察知した段階で、すぐに先生を呼びに行くとか、もっとできることあったよね。
当時はただただ震えながら野次馬として見届けることを全うしただけだった。これが精一杯だった。
自分を守るのも大事だけど、出来ることなら、もっと広い視野で俯瞰して物事を見て、誰かや何かのために、今すべき最善の選択をその都度取れたらいいよね。
まあそれが難しく出来てないから巡り巡って鬱なんだろうがね。いま。理想です。
以上、喧嘩に脅えて机の下で震えていた小学2年生の頃の話でした。
第二章 四節 完