男の子?
髪を切った、というか、デフォルトに戻した。
ここ数年、同じような髪型で生活している。
サイドを3mmのツーブロックで襟足無しのセンターパート。季節によって多少長さは変わる。
何となくしっくりくるから続けているのと、何よりブロウとヘアセットの速さが良い。所謂「タイパが良い」ってやつだ。
ヘアケア含め5分ちょっとで全てが完結する。
髪の色も暖色系を継続している。ピンク〜オレンジ。寒色系は顔色が病人のようになるから避け、アッシュは悲しいかな、モサくなった。暗くても紫が限界で、なんならかえって真っ黒の方がマシ。
1ヶ月に1回は長さの調整とトリートメントをして貰い、翌月にはカラーをして貰う。たまにブリーチもする。
このルーティンを多分3年くらい続けているはず。たまに体調崩して行けない時もあるけど。
ベリーショートのデメリットはメンテナンスの頻度であり、それ以外は大きな不利益を感じない。(正面から襟足が見えるのが気に食わない性分なので、一般的には別に2ヶ月に1回でも良いと思う)
そもそも美容院という場所が好きだったりする。情報源が多いからだ。
例えば流行りの色味や髪型であったり、これからトレンドになるであろう諸々だったり、市内の飲食店の情報であったり。
あとは単純に今担当している美容師と話が合うというのが大きい。
人によっては美容師との会話が苦痛という人もいると思うが、担当(というか現在は独立経営しているから必然的に1人である)美容師はかれこれ5年以上の付き合いである。
彼の趣味の範囲が広いのか、はたまた会話の守備範囲が広いのか、不思議と話のネタが尽きない。
特に音楽の話は間違いなく盛り上がる。それは山中さわおの事だったり、チバユウスケだったり、浅井健一だったり。何ならハロプロの話も出来る。
そもそもの人付き合いの良さからくる会話の幅の広さは少なくともあると思う。
結局今日も1時間の施術中ずっと会話していた。ジャンクゲームの修理の話とか、ポケモンの話とか。
これは良い事かも、と私は参考にする事にした。
インターネットの海にはいくらでも情報が溢れている。深入りしたら面倒臭い事になるが、表面的な情報をサーチして根拠があって相違が無ければいくらでも話のネタになるってもんだ。
そうやって綺麗な上澄みだけの知識を得た私は、対お客様……のお子様相手に無双する事になる。内面はガキンチョなんだな残念ながら。大人な情報はすぐに抜けてしまう。酒以外。
あと漫画とアニメも覚えられないし、俳優の顔と名前もいつまで経っても一致しない。音楽関係は覚えられる。何故だろう、興味の問題か。
まあお陰で先日3年振りに甥と会った際には大変盛り上がった。
来年には小学生へと上がる彼へ、姉からのリクエストで異種格闘技戦みたいな本の最新版を買ってプレゼント。大変興奮し、歓喜の声を上げる。
自慢げに見せてくれた同シリーズのカードには動物や昆虫以外にも、神話に出てくるような神様の類や妖怪、絶滅種なんかもいた。なんじゃこりゃ。
昆虫は詳しくないが(苦手だから)、その他は情報は海から掬いあげて綺麗に濾したものが手元にある。
「へーこんなのもあるんやね」
「あとね、これもある!!」(カードを全部出す)
姉、すまん。仕事を増やした。
甥としては私の様な人種は物珍しいようで、ありとあらゆる玩具を自慢したり、銃火器や刃物を向け(その度私は銃器あるいは刃物を向けるな!と抵抗し)大興奮。
一通り全ての玩具を出して見せてきては、「出したらしまいなさい」と注意される姿を見てほっこりすると同時に、姉、すまん、また仕事増やしたと反省の念を抱く。
そんな無邪気な少年は私に言う。
「何で女の子なのに髪短いの?」
「何で女の子なのにそんな喋り方なの?」
「おばちゃんじゃないよ……おじちゃんでもない、お姉ちゃんでもない!お兄ちゃん!お兄ちゃん!」
あまり長居するのも申し訳ないので、お暇する際に無邪気な少年に向かい立ち上がって私は言う。
「見てみな……スカートを履いてるんだ、どっちだと思う?」
「次会う時に秘密を教えてあげようじゃないか。」
「それまで考えてみな、じゃあ!」
彼は最後まで「バイバイ、お兄ちゃん!」とベランダから見送り、私は全てを濁したまま帰って行った。
世の中には性自認が女でも男っぽい人がいるという事にいつか気付けばいいと思う。
関係無いけど昔、爆弾ジョニーを追い掛けてました。北海道〜大阪まで行ってやりましたよ、私の遅い青春。
解散が本当に惜しかったな……全部の曲が青さと輝きがあってね。
もう少し、色んな世界が見えるようになった少年に爆弾ジョニーってバンドの事を教えてあげたい。多分響くよ。
ああ、あの頃の仲間たちは元気かしら。
さて甥にとっては現状「たまに現れる性別不詳で何かノリのいい謎の親戚(のお兄ちゃん)」だろう。
別にいい、お兄ちゃんでもいい。甥は可愛いもんだ。