不安やストレスを和らげる“タッチング”
5月の連休明け頃に学校の授業や仕事に集中できなくなったり、やる気や食欲が低下したり、眠れなくなったりしたことがありませんか。
こういった症状は五月病と呼ばれ、新年度で環境や人間関係が変わり、知らず知らずのうちにため込んでしまっているストレスが原因といわれます。
5月病は正式な病気の名前ではありませんが、いわゆる5月病の症状を放っておくと、適応障害やうつ病、不眠症などの病気に発展する可能性があるそうです。
そこでこの記事では、ストレスを和らげるのに効果的で簡単な方法“タッチング”をご紹介します。
タッチングとは
手でからだに触れることで心身の不調をケアするタッチングは、看護や介護などの現場で使われる技術です。痛みのある箇所を優しくさすってもらうことで痛みが和らいだり、不安があるときに手や腕をさすってもらって安心感を覚えたりしたことはありませんか。
皮膚は「露出した脳」や「第3の脳」と呼ばれることがあります。皮膚と脳は、発生の過程で同じ外胚葉という細胞群から形成され、関わりが深いそう。皮膚の感覚を処理する脳の感覚野は、脳内で大きな面積を占め、脳に与える影響がそれだけ大きいというのです。
心とのつながりが深い“C触覚線維”
皮膚にはいくつかの触覚がありますが、注目は「C触覚線維」と呼ばれる進化的に最も古い触覚線維です。
C触覚線維が受け取った情報は、自律神経やホルモンの調節をつかさどる視床下部の他、感情にかかわる扁桃体などにも届きます。このことから、心とのつながりが特に深いと考えられています。
また興味深いことに、一般的に人間の五感は、加齢に伴って鈍くなっていきますが、このC触覚線維で感じる心地よさは、年齢を重ねるごとに鋭くなってくるという特徴があります。
触覚は他の感覚に比べると衰えにくい感覚だそうですが、末端部など部分的には痛みを感じにくくなったり、夏でも暑さを感じにくくなったりすることを考えると、やはりC触覚線維で受ける心地よさは特殊だということが分かります。
愛情ホルモン“オキシトシン”
タッチングによる刺激は、愛情ホルモンや幸せホルモンと呼ばれる「オキシトシン」を分泌させます。オキシトシンは元々は、陣痛を促したり、母乳を出やすくしたりすることで知られていたホルモンです。
しかしそれだけでなく、信頼や愛情などの感情に関わり、母と子の絆を強める他、社会的行動に複雑に関わっています。「同じ釜の飯」で絆が深まるとよくいわれますが、一緒に食事を取ることで、オキシトシンが分泌されるのだそうです。
オキシトシンが分泌されると副交感神経が優位になってリラックスし、血圧や脈拍も安定します。そして、不安やストレスを和らげたり、痛みを軽減したりすることが分かっています。
またタッチングによってオキシトシンが分泌されるのは、触れられた側だけでなく、触れる側にも起こります。これには、単に皮膚が触れるという物理的な要素だけでなく、相手のことを慮りながら触れるという心理的な要素も関係があるそうです。
タッチングのポイント
タッチングの効果を高めるには、いくつかのポイントがあります。
ゆっくりなでる
C触覚線維は、1秒間に5㎝程度の速さでなでることで最もよい刺激を得られるということが分かっています。
弱い圧力をかけてなでる
もみほぐすような強い刺激では、防御機能が働いてその刺激を排除するような反応になってしまいます。マッサージなどでは、強い刺激によってもみ返しの症状が出ることがありますよね。弱い圧力をかけながらなでるのが効果的です。
温かい手でなでる
温かい手で触れられると安心感を得られます。また、脳にもその刺激が届いて心まで温かくなるそう。指先だけでなく手のひら全体を使うのもポイントです。
自分で行うセルフタッチング
C触覚線維は、顔と前腕部に特に多く存在します。これは自分でも触りやすい場所なので、セルフタッチングの際にお勧め。テレビを見ながらなどではなく、深い呼吸をしながら、手の感触をしっかり感じて行うのが効果的です。
スキンケアの際に顔をハンドプレス
スキンケアの際に、クリームや乳液、オイルなどを塗った後にハンドプレスをする方は多いと思いますが、これも立派なセルフタッチング。じんわりと優しく圧をかけてリラックスしてください。
手首から肘にかけてさする
入浴時や入浴後、眠る前などのリラックスタイムの他、どこにいてもやりやすいのが、手首から肘にかけての前腕部。優しく圧をかけながら、ゆっくりさすります。
ストレスや緊張、疲労を感じているときにやってみてください。
最後に
不安やストレスを感じやすいこの時期、セルフタッチングや家族でやり合うことで、リラックスして心が安定し、前向きに過ごせるようになるかもしれません。ぜひやってみてください!