アルコール消毒やマスクによる肌荒れ対策(1)
こんにちは。ラブテリ研究チームにて研究解析を担当しております、横尾です。食事から女性の美と健康を実現するという取り組みに共感し、5年ほど前からラブテリに関わっておりますが、普段は化粧品会社の研究所で製品開発を担当しています。今回は私の専門分野であるスキンケアについての話題をお届けします。
なぜアルコール消毒は肌にダメージを与えるの?
アルコール消毒液に使われている代表的な成分、エタノールは、C2H5-OHという化学構造式で表されます。このC2H5という部分は脂質(油)と仲の良い部分、OHという部分は水と仲の良い部分になります。つまり、エタノールは、油とも水とも相性がよいのです。アルコール消毒液はこの性質を利用し、主に脂質でできている菌やウイルスの膜をエタノールで溶かすことで、消毒に一役買っています。
しかし、肌がうるおいを保てているのも、実は水と油両方のおかげ。肌の内部の水分は、肌表面に分泌された皮脂の膜や、その下の角層細胞の間を埋める細胞間脂質など、“脂質(油)”によって封をされたような状態で守られています(バリア機能)。ここに一日に何度もアルコールがすりこまれると…!もうお気づきですね。肌内部の水分を守っている脂質がアルコールによって溶け、バリアが破壊された状態になってしまいます。さらに困ったことに、肌内部の“水分”も(これまた水とも仲の良い)アルコールにくっついて蒸発してしまい、体の外に逃げてしまうのです。
アルコール消毒で荒れたお肌にうるおいを取り戻す!
では、アルコールでダメージを受けた肌にうるおいを取り戻すには、どうすればよいのでしょうか?ポイントは2つ、「水分を引き寄せる」と「油で封をする」です。
まずは「水分を引き寄せる」ポイントから。化粧品成分の中でも、特に水を引き寄せやすいものを「保湿成分」といいます。これがあることで、皮膚の表面近くに、環境中や皮膚の深い部分からの水分を引き寄せることができます。代表的な成分としては、尿素やグリセリン、プロピレングリコール、ヒアルロン酸などが挙げられます。
水分を補うことができたら、外に逃げることを防がなくては意味がありませんので、「油で封」をしましょう。その役目を果たすのが、ワセリンや流動パラフィン、ミツロウ、各種脂肪酸など油の類です。
これら「保湿剤」と「油」の2つがバランスよく配合されたハンドクリームなどを使用して、手を洗った後やアルコール消毒をしたあとなどにこまめにケアをするようにしましょう。
スキンケア商品を購入の際は原料をチェックしてみましょう
昨今では、植物油の中にも、肌のバリア機能を高める効果がある油もあり、植物をベースにしたようなナチュラルイメージの化粧品が好まれる傾向もありますね。とはいえ、必ずしもナチュラル=安全、ナチュラルではないもの=危険、という安直な見方はできないと思っています。
化粧品開発をしている視点からお伝えすると、原料のイメージよりも、その原料の安全性が科学的にしっかりと保証されているかどうかも大事なポイント。たとえば、ヨーロッパでは、ピーナッツ油が赤ちゃんにアレルギー症状を引き起こすといった事例もありました。スキンケアの一環として肌へ使用している間にアレルゲンになる成分が肌から体内に入ってしまい、口からピーナッツを摂った際に免疫システムが暴走してしまったのです。化粧品選びの際には、イメージだけではなく、原料の安全性にもしっかりと目を向けてみてくださいね。
化粧品の原料を調べたいときは、こちらの「化粧品成分オンライン」をおすすめします。科学論文などの文献も豊富に引用してあり、情報がわかりやすくまとめてあります。
https://cosmetic-ingredients.org/
ちなみに私のお気に入りケアは、シアバターを主な成分としている保湿バームです。髪にも肌にもつけられるちょうどよい感触で、手間も少ないですし、さらっとしつつ、しっかり潤って効果◎です。
次回は、マスク着用によるスキンケアやメーキャップのお悩みについて書いていきたいと思います。
\私が記事を書きました/
横尾美星: ラブテリ研究チーム所属。2児の母。ラブテリでとったデータを国内のみならず世界にも発信し、女性・子どもの健康ケアの重要性を世の中に伝えていくのが夢です。