病歴44:BEP療法2コース目後半
BEP療法を受け始めてすぐに髪を短くしていたのであるが、今回は今回で微妙な抜け方をしていた。
前髪の生え際から鬢のあたりが薄く残り、頭頂部や側頭部や後頭部は比較的つるつるという…。
あえて例えるならば、アバターを作るときに前髪だけを貼り付けたような違和感。
これはちょっと、帽子がうっかり脱げてしまった時が恥ずかしくて嫌だなぁ。
2回目の入院時は、粘着テープのクリーナーを持参し、毎日のように枕をコロコロと掃除していた。
洗面台などは共用であるから、そういうところに髪が落ちては掃除をするように心がけた。
他人の髪の毛というのは、とかく不潔な印象を与えるものである。
毎日のシャワーではドライヤーをかけるほどの量もなくて楽だったけれど、抜け続けるのは結構、面倒。
抗がん剤治療を受けるのは3回目となるので、これまでの学習を経て、今回も治療開始にあわせて美容院で髪をなるべく短くしてもらっていた。
1cmぐらいの短さにしてもらっていたのであるが、抜けていない部分はそれなりにちょっぴり伸びた。
もう一度、美容院に行っておきたいけれど、これまでお願いしてきたところに行くのが、気が重かった。
もう10年以上のつきあいのある美容師さんで、任せきりにできるのが楽だったのだけれど、私が病気を繰り返すことに、美容師さんの方がダメージを受けてしまったように感じたからだ。
腹膜播種してしまった腫瘍であるから、私は何度でも病気を繰り返してしまうため、病気になったけれども克服したというハッピーエンドはありえない。
そのことに、慣れていない人はショックを受けることがあるのだなぁ、と、美容師さんの顔を見て思ったしまったのだ。
となると、別の場所に行ってみるのもいいかもしれないと思い、職場近くの新しいお店にふらりと入ってみた。
若い男の人がやっているお店を選んだのは、そもそも「髪がきわめて短い」ということに、女性よりも男性のほうが抵抗感が少ないかも?と、期待したからだ。
快く予約を入れてもらえて、日を改めて、新しい店を訪ねた。
カミソリで剃るのではないが、残っていた部分も産毛も、極めて短くしてもらった。
かえって、すっきりした。
出で触れると、髪を切ったところと抜けたところは明らかに感触が違う。
また延びてきたら短くしてもらったらいいし、気が楽だ。
ただ、母が南無釈迦牟尼仏南無釈迦牟尼仏と手を合わせるのはいただけない。
でも、職業で剃髪になさっている人達もいらっしゃるのだから、必死に帽子で隠そうとしなくてもいいのかなぁ。
一週遅れで2回目の追加の点滴を受けた後、パートナーと久しぶりに会った。
そのために街中にでかけて、マスクをつけている人の少なさにおののいた。
こうなってくると、近寄らないでほしいと身を避けたくなるし、飲食店に入ると特に落ち着かない。
買い物や映画館や美術館も、どこにも行くのが怖い。
満員電車などもっての外だ、
誰か、ヘルプカードのような、感染症に対してハイリスクである印になるものを作ってくれないだろうか。
私はまだケア帽子をつけているので、わかる人はわかるかもしれないけれど、その他の見かけではわからない人もいるわけだ。
どうやってハイリスクの人の前ではマスクをしましょうって判断できると思っているのか、問い詰めたくなる。
病院だって、マスクなしで受診しようとする人たちも出てきているのに。
この3年間、適切な情報が教育されていない証左ではないか。
陰謀論的に、あるいは優生主義のように、死ぬべき人間は死ねばいいという人たちにとっては、そのような目印ができたら、攻撃すべきターゲットになるのだろうか。
それならそれでもいいから、黄色い星印であっても胸を張って書くよ。
私は、今、ここで生きている。
私を殺さないでくれ、と。
私を狙って、そのつばを吐きかけるのは、わかっていてやることだよね?と問い返すために、私は目印がほしい。
そんなことを考えていた2コース目。
治療の効果は出ていることから、治療は頑張って継続することにした。
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