感想『照子と瑠衣』
井上荒野 2003 祥伝社
Twitter(今はXという例のやつだ)で、佐賀之書店さん(https://x.com/Sagano_Book)が、ほんま大賞を紹介しているポストが流れてきた。
これは、「テルマ&ルイーズ」じゃん!
と懐かしい映画がぱっと頭に浮かんだ。
タイトルも、まんまだし。
ああそうか。1991年から、およそ、30年が経った。
テルマとルイーズなら、今も世界に生きているとしたら、立派に老女になっているのかしら。
照子と瑠衣は、70歳。シルバーのBMWに乗って、逃避行?は始まるのだ。
こういう話って、前半は面白いのだ。
日常を振り切って旅を始めるわくわく感。
非日常を生き延びるためにたくましくなり、しがらみから解放されてのびのびとしていく開放感。
こんな生活を送れたら素敵ね、と、主人公たちが理想を噛みしめることへの憧れや安堵感。
だがしかし、映画「テルマ&ルイーズ」はハッピーエンドとは言い難い。
なんでこういう終わり方しかできなかったんだろう、と、もやもやした気持ちでいっぱいになる映画だったと記憶している。
だから、この本も途中で読み進めるのが、不安になったのだ。
だって、照子と瑠衣は、それぞれ70歳だし、なにが起きてもおかしくないし。
ハッピーエンドとはなんだろう。
これは、また別の機会に自分の思うところを文字にしてみたいのだけれども、近頃、よく考える。
自分が中年期から初老期にさしかかる年頃となり、「めでたしめでたし」のその後にいることに気づいてから、考え込むようになった。
主人公に死なないでほしいと思いがちであるが、物語というものはどこで終わるのが適切なのだろう。
主人公の死で物語が終わることもあるが、それはハッピーではないエンドなのだろうか。
そういったことを考えていたので、70歳の二人の女性の物語で、「テルマ&ルイーズ」ぽい本作は、ひやひやどきどきしてきて、読み進むことが怖くなった。
それでちょっとだけ、最後の章を先に読んだ。
どうやら、大丈夫ぽい。
それを確認してから後半を読んだ。
安心して読むことができた。
なので、二人は死なない、とだけ、ネタバレしておく。
私の中には照子もいるし、瑠衣もいる。
結婚はしていないから、でも、どちらにもなり切れない。
ただただ、二人の友情がまぶしい。
「あの素晴らしい愛をもう一度」を口ずさみながら運転したくなるような、気持ちのよい物語だった。