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感想『This is it』のこと

治療として、毎日、点滴を受けている。
最初は針を挿しっぱなしにして、3回でも4回でも使おうとしたが、それがなかなかうまくいかない。そういう時は、手首から肘の間の、外側に針を刺す。
でも、そのルートにうまく薬剤が通らなかったりして、結局、1つの点滴するのに2回も3回も針を刺し直すなら、毎回、太い血管(肘の内側)に抜き差ししてもらうほううが話が早いと思ったのだ。
なにしろ、たった30ー60分程度のことなのだもの。8−10時間もかかる抗がん剤とは話が違う。
そうなると、点滴中はなるべくその腕を動かすわけにはいかない。
できることと言えば、音楽を聞くか、動画を見るか。

それで、配信期間が残り少ないという動画の中から、なんとなく選んだのが、マイケル・ジャクソンのライブのリハーサル映像を中心に映画化した『This is it』だった。

世代として、私がラジオを聞いていた10代から20代、マイケル・ジャクソンも常にヒットを飛ばし続けていた。
だから、有名な曲は知っている。
私はその程度の距離感で知っているだけで、けしてファンではない。
いろんなスキャンダルがあったことも知ってはいるが、詳しくはない。
そういう、ほとんど知識がない人間が見ての感想である。
熱心なファンの人から怒られるかもしれないなぁと思ったので、ちょっと言い訳が多い目。

最初の感想は、太ももが細い!
マイケル・ジャクソンの足の細さにびっくり。男性だからというのもあるとは思うけれども、全体に細いのだけれども、太ももが細くて、体重が気になって仕方がないおばさんから見ると羨ましいやら、なんやら。
そして、2番目に気になったのが、服のデザインもあると思うのですが、この方は肩こりは大丈夫だったんだろうか?と気になって仕方なくなった。
肩に力が入って少し上がり気味に見えてしまうのは肩パッドのせいもあるとして、ちょっと肩関節が内転しているように見える。
首の後ろから肩甲骨の内側のあたり、こってないかなぁ。大丈夫かなぁ。疲れがたまりやすいんじゃないかなぁ。
そんなことを考え出すと気になって気になって、前半の3分の1ぐらい、映像を楽しむどころではなかった。
背中なでなでもみもみしてさしあげたくなった。

大きなライブをするための準備のドキュメントのような映画で、たくさんの人々がマイケル・ジャクソンに憧れながら、オーディションを受ける。
バックダンサーのオーディションの様子を見ていると、まるで『コーラスライン』そのもので、そちらを観たくなったりした。
と同時に、彼ら、ダンサーたちやコーラスたちのマイケル・ジャクソンへの愛情や尊敬、仕事への熱意と、マイケル・ジャクソンを見比べることが、だんだん面白くなってきた。

50歳のマイケル・ジャクソンは、今の自分と同年代と思って見ると、よく動くなぁという気持ちと、疲れちゃうよねぇという気持ちの両方がわく。
これはライブのリハーサル。途中で「フルボイスで歌わせないで」「ウォーミングアプなんだから」とマイケルが言う。
その通りなんだと思う。
彼の動きはリズムを絶対に外さない。その的確さがすごいんだけども、動きは柔らかくて小さく、どこか控えめに見える。筋肉に負担をかけないように、力加減をしているような印象を受ける。その分、優雅に見えたりすることもある。

それに対して、ダンサーたちは常に過剰なまでに本気でアピールをする。
ダンサーたちにとっては、絶対に手に入れたい仕事であり、どこかで手を抜いて降板させられるわけにはいかないし、目に留まることで次に繋がったら嬉しいだろうし、常に本気で、本番のように一生懸命であらねばならないのだろう。
更に、男性ダンサーたちは、細身のマイケル・ジャクソンとは対象的に、かなり見せるための筋肉を身に着けており、太い。ごつい。柔らかいけど、マッチョ。
そんな鍛え上げた彼らは、ぐいぐいと前に来る。本気で目一杯アピールする。これでもかー!という勢いが、申し訳ないが、熱くて暑苦しいぐらいだ。

絵面がとても対照的なのだ。
そんなダンサーたちの中央で、優雅で、でも絶対にリズムを外さないマイケル・ジャクソン。
冷静さを失わずに、証明、音量、効果などと打ち合わせながら、舞台を作り上げていく。
この人の話し声はこんなに柔和で穏やかだったのだなぁ。
当然のことなのかもしれないけれど、ライブを観ている側には、盛り上がってのアドリブに見えるような演出も、こうして細かく打ち合わせしてあること、知りたくなかったと思ってしまったぐらい、細かく作り込んでいく様子が興味深かった。

なにか物語があるわけではない。
けれども、かつてそこに確かに彼がいた。
彼と一緒に仕事をする人たちの興奮、嬉しそうな笑顔、手放しの称賛、心からの尊敬。
彼は自然を愛していること、地球を癒そうではないかとメッセージを残そうとする。
こうやって入念に準備したライブの本番、本気のパフォーマンスを観てしまったら、きっと引き込まれて、惹きつけられてしまったに違いない。
ああ、本番を観てみたかったな。

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