霊感を信じないママが経営するスナック【青白い人】

一人暮らしが長いとね～
幽霊やらお化けやらなんて信じる余裕もなくなるもんですよ。
生きてることで精一杯ってね。

お客さんの中には信じてる人が多くって。
ま、私も話を合わせてるってわけ。

この前来たお客さんの話。

そう！一見さん。そこに座ってた。

一人は無口で青白い顔してさ。顔に傷があって痛々しいのよ。忘れもしないわ。

会話が全くなくて青白い人はちびちびビール飲んで。

私もジロジロ見ちゃ失礼だと思って、見て見ぬふりしてたんだけど。

青白い人が

『ママは幽霊を信じますか？』

って突然聞いて来てびっくりしたわけ。

『私は霊感も無いしわからないけど、お客さんは信じるの？』

って聞いたの。

青白い人は、突然消えた奥さんを探してここまで来たそうなのよ。すごく大切にしていたから悲しくて探しまわったそう。
幽霊でもいいから一緒にいたいほど愛しているんだって。

お客さんったら！悪い冗談は言わないで！奥さんは生きてますよっって私は苦笑いしたの。

それでさ。

ここの近くのアパートで奥さんを見つけたんだって。

『連れて帰ってきたのね！』

って聞いたら、複雑な顔をしてため息をついて帰り支度を始めちゃった。

一人分のお代を払ってそそくさと帰ってしまった。なんか悪いこと聞いちゃったみたいね。私。

隣にいた女性はてっきり奥さんだと思っていたんだけど。

そうそう！話は変わるけど、ちょっと前にさ。
DVから逃げてきた女性が殺された事件があったじゃない？
首閉めたんでしょ？あらっ刺したの！？
ほら、ここから２駅先のアパートよね？！

犯人まだ捕まって無いんでしょ？怖いわね～