見出し画像

“力”と“愛”の統合~マネジメントの深遠なテーマ

“愛なき力は暴力的で支配的であり、力なき愛は感傷的で停滞を生む”
変革をもたらすのに必要な本質的な要素は「力」と「愛」である。
「力」とは成長・自己実現へと駆り立てる力、そして「愛」とは分断したものを和合へと導く力であり、この二つを統合することが、新しい現実を生み出すために不可欠なのだ。

未来を変えるためにほんとうに必要なことー最善の道を見出す技術 アダム・カヘン

のっけから何を大げさなタイトルを!と思われるかもしれませんが、至って真面目に書いてますので(笑)、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです。

アダム・カヘン氏の著書に出てくるこのフレーズ。これまで長年マネジメントの仕事に携わって来て、その真髄を表すとても深い言葉だと思ったんです。

カヘン氏は、南アフリカにおけるアパルトヘイト後の民主化に際し、ネルソン・マンデラ政権のプロジェクトを支援したのをきっかけに、世界50カ国以上で教育、環境、紛争、食糧問題などのテーマで、様々な立場の人間を集めた対話を通じた社会変革支援をしている実践家です。

10年以上前に発刊された本ですが、まさにこの“愛なき力は暴力的で支配的であり、力なき愛は感傷的で停滞を生む”というフレーズが当時の自分の心に深く突き刺さりました。

そもそもマネジメントの仕事って「組織が求める成果」と「メンバー一人ひとりの異なる欲求」という矛盾しがちな双方の期待に答えて成果を出し続けるという、なんとも難しいデフォルト設定の仕事だと思うんです。

組織が求める成果に向けて、
目的を達成しようとする、やり遂げようする衝動としての「力」
メンバーへの共感とケアを通じて組織全体をつないでいく「愛」
二つの絶妙なバランスが大事だと、これまでのキャリアで深く学びました。

リクルート現会長の峰岸さんはNews Picksの記事で、リクルートの経営の大原則について以下のように表現しています。

リクルートは個人が自律し、モチベーション高く働いています。
そのような企業風土、文化を作りたい、という企業からの声もお聞きすることがありますが、そのためにはまず厳格なマネジメントの仕組みを作り込むことが必須です。

その上で現場に権限を委譲することで、現場の自律自転が可能となります。そして、それを適切にモニタリングできる、強く柔軟なマネジメント層を形成していくことが第1条件になるのではないかと思います。
(中略)
つまり、これは究極的には「現場がやりきる仕組みをどう作るか」ということです。その上で個人の意欲をいかに掻き立てるか。
それができれば経営は長期アジェンダに集中することができます。
日本の企業は、この部分が弱いことが多い。

【峰岸会長】リクルートが守り続ける「大原則」を教えよう(NewsPicks)

個人が自由かつ自律的に働いていくためには、厳格なマネジメントの仕組みとしての「力」と、一人ひとりの意欲を掻き立てる「愛」。
言い換えると、“成果創出への強く正しい要望”と”個の尊重“、この二つがなければならない。

リクルートを見て、“自律的な個の集団”という結果の状態だけを見て憧れを抱いてもダメだし、「そもそも、うちの会社に自律的な人材は少ない」と嘆いてもダメだよ、と。
「力」と「愛」の統合の飽くなき追求、という経営の執拗な努力がなければこの状態は実現しないよ。
そう言われてる感じがしますし、共感します。


でも、言うは易し、行うは難し。
そもそも基本的な「力」が足りず、十分な組織成果を挙げられなかった悔しい経験、
「力」に頼った組織運営をして、「愛」が足りずにメンバーの心が離れ、大切な仲間が離職していった経験、
事業が危機的状況に陥った時、「力」と「愛」のバランスに葛藤し、自分の心身が悲鳴を上げた経験、

など、苦い思い出を同時に思い起こします。

「力を誇示するのでもなく、愛を正当化もせず、その葛藤の中で、ひたすらにその統合を目指す」というのが、マネジメントという仕事の真髄なんだと。

その葛藤が成功と成長を生むと信じて、安易にどちらか一方におもねらなず踏ん張っていると、いつのまにか、自分自身の人間としての成長につながる、そんな無形のギフトを与えてくれる仕事なんだなと思うんです。

力と愛の統合による、良き社会の実現を目指して。

Life is quest.

いいなと思ったら応援しよう!