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まろんの鼓動とストーブのぬくもり
まろんが座椅子で眠りにつくとき、その姿には小さな儀式のようなものがあります。お気に入りの位置を何度かくるりと回って確かめてから、ようやく丸くなって目を閉じる。そんな様子を眺めていると、こちらも自然とリラックスしてしまいます。でも、ストーブの近くの座椅子の誘惑には逆らえません。私も、そこに座りたい気持ちがふくらむのです。
そっと割り込むと、まろんは一瞬だけ目を開けてちらりとこちらを見ます。その目には「また来たの?」というような、少し迷惑そうな表情。でも、すぐに目を閉じて再び夢の中へ戻っていきます。その何でも許してくれるような柔らかな態度に甘えて、私も隣に腰を下ろしてしまいました。ストーブの暖かさが座椅子全体に広がっていて、冷えた体をじんわりと包み込んでくれるのがたまりません。セラミックヒーターでは味わえない、この特別な温もり。まろんもそれをわかっているのかもしれません。
ふわふわの毛並みにそっと顔を埋めると、まろんの体温とストーブの熱が合わさって、まるで小さな毛布にくるまれているような感覚が広がります。その瞬間は、とても贅沢な気持ちになります。ストーブのやさしい音、まろんの穏やかな呼吸、そして外の冷たい空気のコントラスト。すべてが心地よく調和しているように感じます。
その日も、まろんに寄り添いながら、ついうとうとと居眠りしてしまいました。頬に伝わるまろんの心臓の鼓動が、静かなリズムで感じられます。「どきどき、どきどき」と、まるで私に何かを伝えたいかのように早いリズムで響く。最初は驚きました。「もしかして、私がくっついているのが嫌なの?」それとも「今日は遊び足りなかったのかな?」と考えながら、起こさないようにそっとしておきました。
後で調べてわかったことですが、猫の鼓動が速いのは普通のことだそうです。そのことを知ったとき、なんだか安心すると同時に少し微笑ましくも感じました。まろんはただ、自分のリズムで生きていただけなのだと。私は彼女に合わせて寄り添うだけでよかったのです。
また、こうしてまろんと過ごす穏やかな時間がやってくるのだと思うと、少し幸せな気持ちになります。今日もストーブのそばで、あたたかい座椅子を共有しながら、まろんの鼓動を感じるひとときを楽しもうと思います。