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まろんと靴下

 私は体調を崩し、ふとんの中で静かに過ごしていました。普段なら縁側で日向ぼっこをしているはずのまろんが、今日は一緒にいてくれるようです。私のすぐ横やふとんの上で小さく丸まった彼女の姿を見ると、じんわりとした安心感が広がります。

 まろんは眠いわけでもないようで、ときどき小さく伸びをしたり、起き上がって私の顔をじっと見つめたりしています。そのたびに「大丈夫?」とでも言うような視線を感じます。そして、私が起きそうにないとわかると、またおなじ場所に戻り、ふとんの上で静かに横たわるのです。

 今日はたたまずに置いてあった私の服の上がまろんの選んだ場所でした。なぜか、彼女は服の上や布地の柔らかいところが好きなようです。特に笑ってしまうのは、私の脱いだ靴下を見つけたときの彼女の行動です。

 まろんはそっと靴下の匂いを嗅ぎ、それを前足で器用におさえてカミカミし始めます。その様子を見ていると、あまりのかわいさに注意する気も失せてしまいます。しばらくかじり終えると、満足したように靴下をぽとりと落とし、それを自分のおなかの下に敷くのです。そして、まるで特別な寝具でも手に入れたかのような顔で目を細め、眠りに落ちていきます。

 どうやら、彼女なりに「私の匂い」を感じるものをそばに置いて安心したいのかもしれません。靴下は決して洗い立てではないのに、それがまろんにとって心地よいのだと思うと、なんだかおかしくて、愛おしくなります。

 ふとんの中でうとうとしながら、そんなまろんの行動を思い返すと、心がふんわりと温かくなります。彼女のそばで過ごす時間は、体調の悪い日も特別な安らぎを与えてくれるものでした。靴下をおなかの下に敷いて眠る小さな守護者。その姿を見ていると、まろんが私にとってどれだけ大切な存在か、改めて気づかされます。

 明日には少し元気になって、まろんが縁側でゆったりした時間を過ごせるといいな、と願いながら、私はそっと目を閉じました。

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