
【日記】私はそんな風には怒れない
アンガーマネジメントという言葉が一般的になって久しい。詳しく知っているわけではないが、簡単に怒りを外に表してしまうと損だから、怒りをコントロールする術を身につけようみたいなことだと解釈している。パワハラの問題なんかもあるし、現代は怒ること自体が忌避される時代なんだと思う。
一方でSNSなんかには、あの場面でもっと怒るべきだった、この場面で怒れなかったなんて投稿が散見され、それらが多くの共感を得ているのを見かける。アンガーマネジメント的な風潮とは真逆な気はするが、時には怒りを表明することが必要だということなのかもしれない。
私はというと、タイトルにも書いたが怒ることができない人間である。怒らないではなく怒れないだ。
それは瞬発力が無いせいで怒るべきタイミングで瞬時に着火できないからであり、怒鳴って物事が好転した成功体験がないからであり、(自分へ降りかかる)トラブルや不利益が考えれば考えるほど「仕方ない」「そういうもんだ」に落ち着いてしまうからである。他人を動かしたり期待したりしなきゃならないポジションに立ったことがないというのももちろんある。
自分がこうだから、人が怒りを露わにしていてもあまり共感ができないし、逆にその人たちに対する視線がどうしても冷たくなってしまう。
朝のスーパーの出来事
この冬はキャベツが高く、1玉500円くらいしたりする。そんな中、あるスーパーで数量限定1玉100円のセールがあるということで、開店数分前に着くようにそのスーパーへ向かった。
到着すると、駐車場にはすでに長蛇の列ができており、買えるかどうかは分からなかったが、とりあえず並んで待つことにした。私の後ろにもまだまだ人が集まってきていた。やはり1玉100円は魅力みたいだ。私のすぐ後ろの老人はおしゃべりが好きなようで、並んで待っている間、「今年はキャベツが高い」だの、「並ぶのを止めないってことは十分行き渡る数があるんじゃないか」だの、ずっと近くの人と喋っていた。
開店時間になると列が進み始めた。先頭の人から店員にキャベツを手渡され、もらった人から店の中へ入って行った。10分ほど進んでそろそろ私の番というところで、店員から「この辺りから後ろはすみませんがもうキャベツありません」と私の10人ほど後ろの人たちに声を掛けていた。ギリギリセーフで私の分はあるらしかった。
すると、私のすぐ後ろのずっと喋っていた老人が店員にいちゃもんをつけ始めた。
「もっと早くに(後ろの方の人は買えないことが)分かっていたはずだ」だの「寒い中並んでいたのに可哀想」だの。怒鳴ってはいないが、はっきりと苦情を言うような形で店員に文句を言っていた。
まず第一に、このスーパーは高いキャベツを破格の安さで売ってくれているのだ。そこには客寄せの側面もあるとはいえ、その安さに釣られて集まって勝手に並んでいる客サイドには、スーパーや店員に感謝こそすれ、オペレーションに文句をいう資格など1ミリも無い。
第二に、勝手に客が開店前に集まって列を形成しているのだ。そこをわざわざ店員が数を数えてあげる義理はない。確かに、事前にここまでが買えると分かっていれば親切だが、それをするには人手が必要で、店員だって開店前の他の業務があることを考えれば、そこに手が回らないのも理解ができる。
第三、買えなかった人たちは大して長く並んでいない。私より後ろにいるという事は、せいぜい10分くらいしか並んでいない。全然長時間ではない。
最後に、そもそも文句を言っていた老人はキャベツを買えているのだ。並んだ結果キャベツが買えているのだから、後ろの人の気持ちを代弁して(代弁にもなってない)文句をつける資格などないのだ。
つまり私から見ると、あの人は見当はずれな所で怒りを露わにして、店員の気分を害しているようにしか見えなかったのだ。
都内の犬に対する外国人の偏見
ある動画で日本で見かける飼い犬の話題になった。犬がベビーカーみたいなのに乗っているのはおかしい、犬の学校みたいなのがあってそこで躾をさせている、寒い時だけでなく暑い時にも犬に服を着せている。そういったことを挙げて、日本人の犬の飼い方はおかしい、日本人の半分は犬が好きで飼っているんじゃない、子供が持てないから犬を赤ちゃんに見立てている、とまあまあ強い口調で話していた。
先に擁護しておくと、この動画は若いYouTuberが等身大の姿であれこれ話すのがウリで敢えて強い言葉を使っている部分もあるし、私だって服を着ている犬やベビーカーに乗っている犬を見て苦笑いしてしまう。犬の躾の学校については初めて聞いたけど、私も動画の論調と同じように「なんじゃそれは意味分からん」という感想に至った。
ただ一歩踏み込んで考えてみると違う景色が見えてくる。
まず、動画ではこれらの事象を日本の飼い犬の話として語っていたが、彼らは東京在住の外国人なので、見かけたことを日本全体の話とするのは少々主語がでかい。
都内の人の多さや交通量を考えると、安全性を考えて家の近所ではなく広い公園や河川敷で散歩をさせようと考えるのは妥当だし、そこへ向かうまでにベビーカーを使うのは理にかなっている。
普段は家の周りで散歩をしているけど、たまには違う公園に行こう、小型犬だと行き帰りで疲れてしまうからベビーカーを使おうというのも十分に理解できる話である。
躾の学校の話だってそうだ。家でだって躾は出来るかもしれないが、都内の住宅の密集具合を考えると、無駄吠えやトイレがきちんと出来ないことはリスクになる為、そういう学校であらかじめ躾けてもらった方が合理的である。
(犬の学校はよく知らないので想像で話してる)
犬の服に関しては、動画内でも注釈があったが、犬が夏に服を着ているのは、紫外線を防ぐという目的があるらしい。
このように一見異常なことでも、少し考えるとそれぞれの事情が見えてくるので、強い言葉で非難したり、怒ったように話すことは私には難しい。
それでも私は怒れない
他人の身勝手な怒りの振る舞いを2例挙げたが、ではこの身勝手に怒っている人たちに対して私が怒れるかと言うと、それもちょっと難しい。
キャベツの老人だって、歳を取って視野が狭くなった結果としてのあの振る舞いだと想像ができ、あの人に悪意があったわけではない。きっと昔から不満をぶつける事で世を渡ってきたのだろう。
犬の話にしても、その国の事情や文化を外国人が全て把握するのは難しく、自分で見たことや現地人に聞いたことが全てになるのは仕方がない部分があるし、着飾らずありのままの意見を言うのが彼のYouTuberとしての求められているキャラクターなので、動画を面白くするために、口調が強くなるのもまた仕方がない。
そういった事情を想像すると、そう簡単に怒りの感情が沸いてこないのだ。
まあわざわざnoteに書くんだから、怒れないとか言いながら結構イラッときてるんでしょうけどね。
ではまた明日。
※日本語が上手い英語話者が、「あの単語って日本語で何だっけ」って言って、実は日本語でも英語と同じだったってことが多々あるけど(例えばワークライフバランス)、実際英語で初めて聞いた概念が日本語だと訳されるのかカタカナになるかは確かに分からない。「犬の学校」が正解?「犬のスクール」?「ドッグスクール」?