苦労噺①
お読みになる前に
これから綴られる「苦労噺」はフィクションであり、実在の人物・企業・事件などとは関係ありません
苦労噺①
2年前、私は会社のある部署で追い詰められていた。そのまま転がるように病み崩れ、部署異動を願い出た。
1年前、私は異動先の部署(女の園であった)で再度追い詰められ、そのついでに結婚の話も出ていた恋人と別れた。
それなりに疲弊した状態で一人の身になり、私は憤慨した。
メロスではないが、このような邪知暴虐な環境から抜け出さねばならぬと決意した。
そして思いついたのが資格を取得して転職するということであった。
私は温室育ちの人間であり、発想も平凡である。
悲しいかな、抵抗できる手段は限られていたのであった。
ところで私は常々金策に歩き回っていた。
(どうしようもない浪費家としての一面は到底隠しきれるものではないが、
奇跡的に当時周囲にいた人々には(まだ)気が付かれていなかった。これについてもいずれ書くことになろう)
資格試験を受けるにしても、金銭的な面での保険は必要である。
資格を取るためには実習が必要であったため、会社はどこかでやめなければならない。その間の保証は誰もしてくれない。貯蓄が必要である。
私は渋々”その時”まで会社を続けることにした。
貯蓄をするのであれば固定費を下げるのが手っ取り早い。
思い立ったが吉日で、私は一人暮らしの家を引き払い、とあるシェアハウスに入居することとした。
会社からほど近く、それなりの賃料である。
シェアハウス暮らしには慣れていたから、期限付きであれば問題もあるまい。
ベタな展開ではあるが、私は運がいいと思っていた。
入居するまでは。
つづく