うつほ物語とは
【あらすじ】
遣唐使として海を渡った俊蔭は、仙人たちから楽器の琴とその奏法を伝授されました。それらは俊蔭の娘、さらに孫の仲忠へと引き継がれていきます。
仲忠が成人する頃、大勢の貴族が左大将正頼の娘 あて宮へ求婚します。仲忠も有力候補者でしたが、あて宮は春宮へ入内します。
仲忠は帝の娘と結婚し、いぬ宮が誕生します。俊蔭が持ち帰った琴と奏法はいぬ宮へ引き継がれて物語が幕引きとなります。
【成立】
平安時代中期 10世紀ころの作品で、日本最古の現存する長編物語です。枕草子や源氏物語にも記述がある事から、それら以前の物語ということが分かります。
作者は分かっていません。漢学、和歌に精通した人と考えられており、後撰和歌集の選者で、梨壺の5人のメンバーである源順が作者候補と言われています。
【名前の由来】
仲忠は子供のころ、熊がすみかとしていた巨木の「うつほ(空洞)」に母と一緒に住み、そこで琴の奏法が伝授されました。物語の題名は、この「うつほ」から付けられたと考えられています。
【終わりに】
うつほ物語は、源氏物語より古い物語ですが、源氏物語ほど認知度が高くありません。それだけに、読めば読むほど発見がある、玉手箱のような作品と言えます。
これまで、手軽に原文や現代語訳を読むことができませんでしたが、近年、6冊に渡った文庫本が出版され、全文を手軽に読む事ができるようになりました。
これから、色々な角度からうつほ物語を掘り下げていくつもりです。源氏物語とは違う、平安王朝物語の魅力が伝えられたら嬉しいです。