マッチングアプリは転職活動と似ている
1996年生まれ、今年28歳の独身男性がマッチングアプリを利用した感想。
1.革命:現実は辛い暗い 時に苦しい
「言わなきゃいけないこと、あるんだよね」
7月の終わり、喫茶店で彼女が話し始めた時、僕は「MOROHAみたいだなぁ」などと呑気に考えていて、よもや続く言葉が「私たち、もう別れない?」だなんて、思ってもいなかった。
ポツポツと語り出した彼女曰く、僕からの愛を全く感じず、気持ちが完全に切れてしまったと。
確かに自分は連絡がマメではないし、最近は会う頻度も減っていたかもしれない。でも4年半も付き合っていて、ただの倦怠期と捉えていたのは僕だけだったようだ。
何とか巻き返せないかゴネてもみたが、
「LINEもブロックしたりしないし、何かあったら気軽に連絡してよね〜」
とのことなので、どうやらコンビ解散は提案ではなく決定、既に先を見据えているようだ。
最後に改札で(元)彼女を見送る時、泣かなかったのは、僕が長男だからだろう。
別れてから暫くは心が荒んでいた。
映画のラブシーンは飛ばしたし、栄冠ナインで生徒に彼女ができるだけでイライラもしていた。
仕事中も元気がなかったようで、別れた旨を報告した際、課長はどこか納得したような表情だった。
少しでも気を紛らわそうと、なぜかトリコ全巻を大人買いしたりもした。
今考えれば、気が狂っていたのかも知れない。
ちなみにトリコの終盤は、つまらないドラゴンボールみたいだった。
ただ、幸運なことに、フラれて2週間でお盆休みに突入したことで、友人各所にはご報告&応援のメッセージをいただけ、徐々に傷は癒えていった。
栄冠ナインも5年目に突入する頃には、完全に気持ちを切り替え、「早く次の恋がしたい」と思うようになっていた。
さてこれからどうしたものかと思っていると、旧友達はこぞってマッチングアプリをオススメしてくれた。
確かに最近恋人ができたと報告してくれた面々は、皆マッチングアプリで出会っており、特段抵抗感もなく、自分もアプリを始めることにした。
2.マッチングアプリと就職活動は似ている
アプリの仕組み・流れは以下の通りだ。
・プロフィール登録をする
・複数の異性に「イイね」を送ったり、逆に異性から「イイね」が届いたりする。
・「イイね」が返ってくる/送り返すと、マッチング成立。
・マッチしたらメッセージを送ったり、電話ができるようになる。
・気が合う人とは日程調整をしてデートに進む。
・複数回のデートを重ね、この人だ!と思ったら告白してカップル成立。
当然マッチするハードルが1番高い。また、いざ会ってみても「思ってたんと違う…」となる事も多い。
そのため、複数の異性に対して「イイね」を送る/同時進行でメッセージのやり取りをするのは、至極当然のことだ。
自分もアプリを使っていた3ヶ月の間は、帰宅中に「イイね」やメッセージを送るのが日課となっていた。後半はやや義務感でやっていた節もあるが、この「持ち駒を増やす」感覚は、就活期後半を彷彿とさせる。
全体の流れ自体、ES提出→webテスト→複数回の面接→内々定と酷似しているし、複数の企業の選考が進んでいるのに「御社が第一志望です!」みたいな顔をして面接に参加するのも同じだ。
希望条件で検索をかけ、異性の写真がずらっと並んでいるのを見た時、自分は2年前に使っていたDODAの画面を思い出した。
「風通しの良い職場です!」
「営業だけでなくコンサル/マーケティングも担っていただきます。」
具体的なことは何も書いていない求人
「休日はカフェに行ったり、旅行に行きます!」
「美味しいものが好き」
自分は人間です、以上の意味を持たない自己紹介
どちらもただ文字を埋めたいがための文字列。
一方で、「こんな優良企業でも募集があるのか!/こんな可愛い子でもアプリやってるんだ!」となる場面も何度かあった。
大抵の場合、勤務地や職種/年齢や職種、離婚歴など、何かしら懸念事項があることが多い。
また、多くの異性にメッセージを送る中で、だんだんとテンプレートができあがる感じも、ESでガクチカを使い回しているのと同じかも知れない。
終盤自分は、ご飯屋さんのリストも使い回していた。
面接終盤に他社の選考状況を訊かれると、「状況確認してくるってことは、次の面接も考えてくれている/合格ってことか?」なんて思ったりもしていたが、「他の女の子とはどんな感じですか?」と訊いてきた子は大概次のデートにも行けるので、競合他社(者)を気にするのは、企業も女の子も一緒のようだ。
ただ、転職サイトは無料で使えるが、マッチングアプリは有料での運用が基本になる。アプリやプラン毎に料金は異なるが、相場は3,000円/月と決して安くはない。
となると、期間を決めて、その間に恋人を作りたい!となるのがアプリ利用者の心理だ。
自分も例に漏れず、「3ヶ月のうちに彼女を作るぞ!」と意気込み、8月末にwithをインストールした。
あれから3ヶ月が経った今、アプリを使ってみた感想/どんな出会いがあったか/結果についても書いていこうと思う。
3.聖挙編:無双交際ボルバルザーク〜デートをした後に、もう一度デートをすることができる〜
プロフィール登録
:あるもんで最強の闘い方 探ってくんだよ
マッチングアプリを入れて最初の壁は、顔写真の登録だ。
「自分らしさが伝わる写真を用意して下さい!」と突然言われても、履歴書用に2年前に撮った真顔の写真しかない。
他にないかと写真フォルダを漁ってみるも、旧友達との集合写真、旅行の風景、ラーメン、Twitterのスクショしかなく、マッチングの遥か手前で、いきなり途方に暮れてしまった。
数日悩み、結局、消さずに残していた元カノとのツーショットを無理やり切り抜くことで、なんとか凌ぐことにした。
新しく彼女を作ろうというのに、元彼の写真も消していない自分のズボラさに、まさか感謝することになるとは。
自分のプロフィールを見るたびに心がえぐられる気もするが、その分、次の恋へのモチベーションも高まるだろう、と無理やり自分を納得させることにした。
他いくつかサブ写真と自己紹介文を記入すると、登録は完了となった。
イイね/マッチング
:失礼だな純愛だよ
無事登録が完了すると、いよいよアプリ開始だ。
マッチングアプリの原理原則として、「女>>男」の環境であり、基本的に女性は選ぶ側/男は申し込む側となる。
そんなことは理解した上でアプリは始めているので、さてどんな女性がいるのかと画面を眺めた時、ここで2つ目の壁が出てくる。
どの子にイイねを送るべきか分からない。
「どんな女が好み(タイプ)かな?」
就活の時は自己分析なる茶番を通して業界や職種など当たりをつけていたものだが、残念ながら恋愛の棚に『絶対内定』はない。
少なくとも、身長と尻がデカイ女ではないことは分かっているが、かと言って譲れないポイントがあるかと言われたら、少なくとも自覚は出来ていない。
「女の趣味がつまらん奴は、ソイツ自身もつまらん」
脳内に響く木村昴の声を無視して、なんとかスクリーニングしようとするも、選択肢が多すぎる。
「20代女性」に絞っても、withだけで80万人以上アクティブユーザーがいるらしく、これだけ沢山の女性の中から、ただ一人の運命の女性を探して選ぶのは困難だ。
選択肢が多いと、かえって選択が難しくなることを「ジャムの法則」と言うが、アイエンガー教授が今の時代にいたら、きっと「withの法則」と呼んでいただろう。
しかもジャムと違って、マッチングアプリは味の違いもイマイチ分からない。
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ディズニー・9 と3/4番線ホームの写真
「友人の紹介で始めました!」
好きなこと:美味しいご飯を食べること
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↑5人に1人はリアルにこんな感じだ。
いざ文字に起こしてみると、意外と書くことがないのは非常によく分かる。が、食べることが好きなら、せめて好きな物くらいは書いてくれ。
さらにタチの悪いことに、加工の力か、ベストショットを選んでいるのか、はたまた自分のストライクゾーンが広いだけなのかは分からないが、みんなそれなりに可愛く見える。
実際には、簡素なプロフィールでも、お珍ポ騎士団から大量のイイねが来るので、加筆する気も起きないのだろう。
こうなってくると、あとは趣味や好きなものが自分と似ている等の要素でスクリーニングしていくしかない。
ただ、ここまでボロクソに書いている自分自身もたいした趣味のない薄い人間であり、結果として、「芸人/音楽/漫画アニメ」など、万人にウケる趣味嗜好を持つ女性へ片っ端からイイねを送ることになった。
メッセージ/電話
:ちょっと話変わるんですが…
イイね送信後のマッチング率は、転職市場での書類通過率よりも低い。
withでは女性側が受け取ったイイね数を見られるのだが、200を超えていないと少ないなと思うくらいには皆モテまくり、女性は選び放題の買い手市場だ。
それでもイイねを果敢に送り続けると、徐々にマッチングが成立し、メッセージでのやりとりになっていく。
なお、マッチ後、メッセージ1発目への返信率も意外と低い。「ならイイね返すなよ」とは思うが。
マッチしてからは、今度は話題の提供に苦心することになる。
正直マッチ後すぐにデートの打診をしても良いのかも知れないが、体裁的にも、まずはメッセージで交流を深めるのが一般的、と当時の自分は思っていた。
当然メッセージを通して、相手のことを知っていく中で、「この人波長が合うかも!」「この人はなんか違うな…」とはなったりはする。
だが今振り返ると、メッセージでは限界もあり、作法にこだわらず、数回ラリーをしたら、さっさとデートor電話を提案すべきだったと思う。無駄なプライドは捨てるべき。
ちなみにwithは20ラリーすると「実際に会ってみませんか?」と案内が出てくるが、これは流石に遅すぎると思う。
メッセージの中では、仕事、趣味、食、サブ写真、休日の過ごし方など、あの手この手で必死に話題を広げるが、割とすぐに手詰まりになる。
相手が乗り気で返信をくれれば、深堀ったり、楽しくラリーもできるのだが、そうは問屋が卸さない。
途中メッセージが返ってこなくなる/途切れるのは、ある意味健全で全くもって良いのだが、素っ気ない返信が中途半端に返ってきて、どう会話を広げるか考え続けるのは、地味にストレスだった。
「今日も仕事終わったらメッセージ返さなきゃな…」
仕事で疲労困憊の中、義務感でメッセージを返している瞬間も多々あり、お金を払ってる分、仕事よりしんどかったかも知れない。
なんとかメッセージを続け、食事の約束を漕ぎ着けても安心はできない。
例えば、来週末会いましょう、となった場合、それまで期間、全くメッセージを送らないのは、印象があまり良くない。
ただ、食事の約束を取り付けた時点で一度会話は途切れているので、そこからデート当日に向けて、どう会話を盛り上げるか、常に頭を悩ませていた。
後半期では、できるだけそういった不利対面を避けるために、複数タブで会話を展開し、他の話をしつつ、並行してお店選びなどの話をするなどの工夫を凝らしていた。
努力の甲斐あってか、2ヶ月間の間、ドタキャンは0で済んだ。
初アポ
:新人ンンンンン!!コーラは好きかぁーーーー?????
いきなり夜は警戒されるかもしれないという弱者男性的発想と、お酒の弱さから、初回デートは土日のランチを提案することが多かった。
自分のリサーチ力不足かも知れないが、土日にランチを席だけ予約できる雰囲気の良いカフェは意外と少なく、自然と同じお店に通うようになった。
マークシティ近くのカフェには2ヶ月で4回も通っており、日替わりメニューがあって本当に助かった。
最初はお店の入り口も分からなかったのに、終盤は、トイレの位置も、セルフサービスの水も、QRコードでの注文システムも全て把握していた。
デートまでくると、メンバーも絞られてくるので、思い出に残っている面々を何人か紹介する。
なお、名前は自分が勝手に付けたもので、解説は省くが、悪意はない。
・KenKen(26)
アプリを初めて1週間、記念すべき初アポ。
やたらと音楽に詳しく、軽音サークルでファンクもやっていたと告げたら、「Scoobie Do、Jamiro、EWF…」とスラスラ出てきた。
ラジ父リスナー。
2週間前に彼氏と別れたばかり。その勢いでアプリをインストールしており、境遇はかなり近い。
・乙アリス(25)
巨乳のギャル。
常に元気いっぱいで天真爛漫。
お酒は飲めないが、想定の倍飯を食う。
キリンジ好きで、洋楽も詳しい。
巨乳。
・スージーQ(28)
元叙々苑の店員。現在ベンチャー企業勤務。
流石に焼肉には詳しく、実際にお店でも焼き方を指南してくれた。
ヒールが高すぎて、1度身長を抜かれた。
大人っぽい容姿とは裏腹に、最俺ファン。
・ロッキー(29)
やたらと芸人ラジオに詳しく、くりぃむANNも全話視聴済。
最近はじめた麻雀で国士無双に振り込み、「それアリなの?」とキレていた。
コーヒーは苦手。
学生時代は箏で全国大会を経験。
謎解き好きでSCRAP会員。
大分出張のお土産をくれた。
・エイジさん(31)
登場人物の中で最年長、オーバーエイジ枠。
エスカレーターで美大卒。
殺生丸とデイダラが好き。咄嗟にC4カルラとボケられなかった事を今でも後悔。
初回ランチ後にロフトに買い物に行くと言ったら、同道してくれた。
身長170cm未満の男に人権はないらしい。
・KADOKAWAネキ(26)
やたらと書籍と草木に詳しい。
お笑いやエンタメもそこそこ詳しく、自分への第一印象は「なかむら⭐︎しゅんみたい」
仕事が忙しすぎて、日曜ランチの後に会社へ向かった。
どんぐりを拾う。
感受性豊か。雄弁は金。
・ま◯こ(28)
ロコディファンで、今年のツアーは石川へ遠征。お土産もくれた。
KOCを経てラブレターズのアンチになった。
丸メガネ男子が好きらしく、購入を強く勧められた。
主人公タイプで、中世にいたら天動説を信じていそう。
・偽フランキー(27)
世の中や他人への興味は薄い、ある意味とても素直な性格。
夜イタリアンでコーラを飲んでいた。
川北のゲーム配信へコメントもしており、陰マメやまーごめスタンプも使用。
その他、もえぴ、我愛羅、8/22のオムカレーマン、ま◯こ2、プリンス・ザ・リッパーなど、紹介したい面々もいるのだが、割愛。
デート(2回目以降)
:ちゃんと飯食ってるか? ちくしょう、やっぱ言えねぇや
初回のデートでお互いアリ/また会いたいとなった場合、2-3回とデートを重ねていき、一般的には、3回目のデートで告白するのが相場と言われている。
ただ、3回一緒にご飯を食べたくらいでは、正直相手のことはまだ分からないと個人的には思う。
就活の場合、入社後のギャップを生まないために、最終面接前にはOB面談を推奨したり、イベントを企画する会社もあるが、マッチングアプリでも、買い物やアクティビティ、夜の散歩など、食事以外のことを通して、相手の価値観を知るのが良いかも知れない。
自分も、何度か謎解きに参加したし、危うくナンジャタウンに連れて行かれるところだった。
あとは、日程の組み方にも注意が必要だ。
中途採用は欠員を埋めるために行っているため、新卒時と違って内定の有効期限が極端に短いが、アプリは内定=入社となるため、もっとシビアだ。
なんなら二次面接の段階で志望度を決めて、日程をきちんと組まないといけない。
自分は2日連続で3回目のデート、しかも第二志望→第一志望の順で日程を組んでしまい、初日は虚無になりながら浅草で謎解きをした。
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