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現状況下での減税・バラマキ政策は日本経済をインフレ地獄に叩き込む悪手だ ――【玉木雄一郎ショーに踊らされる方たちへ】

元財務官僚の玉木雄一郎が『減税します!』『ばらまきで景気回復!』なんて言ってるし、大丈夫だろう・・・・そう思った皆さん、ちょっと待ってください。政治家のパフォーマンスに踊らされるのもほどほどにしないと、後々笑い話じゃ済まない事態になりかねません。今回はインフレと減税の関係が、いかに甘くないかを専門的に解説していきましょう。

インフレと実質賃金の関係:基本の「キ」

まず、インフレと実質賃金の関係について理解することが不可欠。インフレとは、皆さんご存じの通り、物価が継続的に上昇する状態を指します。一方、実質賃金とは、名目賃金(私たちが受け取る給与の額面)を物価水準で調整したものであり、実際の購買力を表します。

  • インフレ率 > 名目賃金上昇率 ⇒ 実質賃金は減少

  • インフレ率 < 名目賃金上昇率 ⇒ 実質賃金は増加

つまり、物価の上昇率が賃金の伸びを上回れば、私たちの購買力は低下し、生活は苦しくなる。これが、現在の日本で起きていることです。

つまり、インフレが進みすぎると前述したように実質賃金が落ち込み、国民の生活はより厳しくなります。減税によって可処分所得が一時的に増えても、物価高のスピードがさらに速ければ結局は追い付けなくなるわけですね。

ビルトイン・スタビライザー:経済の自動安定化装置

次に、経済学的観点から重要なのが、ビルトイン・スタビライザー(自動安定装置)です。

  • 景気が良いとき…所得が増えて高い税率がかかるため、過度なインフレを抑える

  • 景気が悪いとき…所得が減って税収が自然と下がるため、個人にお金が残りやすくなり、景気下支え

要するに、「景気が過剰に行き過ぎないように自動的に調整してくれる」仕組みというわけです。

減税・バラマキの愚:インフレを加速させる愚策

では、現在のインフレ下で減税やバラマキを実施するとどうなるのでしょう?答えは明白。

  • 減税: 可処分所得増加 ⇒ 消費刺激 ⇒ 需要拡大 ⇒ インフレ加速

  • バラマキ(給付金など): 可処分所得増加 ⇒ 消費刺激 ⇒ 需要拡大 ⇒ インフレ加速

つまり、これらの政策は、ビルトイン・スタビライザーとは真逆の働きをし、インフレをさらに加速させることになるのです。火に油を注ぐようなもの。結果として、物価上昇がさらに進み、実質賃金はさらに減少し、国民生活は一層苦しくなる。まさに本末転倒の政策と言えるでしょう。

インフレで実質賃金が目減りするメカニズム

重複してしまいますが、もう一度、賃金と物価の関係をおさらいします。

  1. 名目賃金が増える

  2. しかし物価がそれ以上のペースで上がる

  3. 結果、使えるお金の「実質的な価値」が減る

ここで減税を推し進めれば、それだけ可処分所得が増え、需要が拡大。さらにインフレが加速し、結局は名目賃金増加のペースを大きく上回る物価上昇となり、3.の「実質賃金が減る」事態に拍車をかけます。

デフレ脱却の幻想:インフレ下での実現不可能性

最後に、政治家が頻繁に口にする「デフレ脱却」について考えてみましょう。そもそもデフレとは、物価が継続的に下落する状態を指します。現在の日本は、紛れもなくインフレ状態にあるのです。インフレ下でデフレ脱却を目指すというのは、「熱があるから解熱剤を飲みます」と言いながら、同時に「寒気がするから体を温めます」と言っているような、矛盾した行為です。今がデフレじゃないのは少し調べればわかることです。

真に必要な政策とは?

現在の日本経済に必要なのは、インフレを助長する減税やバラマキではなく、実質賃金を上昇させる政策です。具体的には、以下のような政策が考えられます

  • 供給サイドの強化: 規制緩和や成長戦略の推進により、企業の生産性を向上させ、供給能力を高めることで、コストプッシュ型のインフレ圧力を軽減。

  • 賃上げの促進: 政府は、企業に対して積極的な賃上げを促すとともに、労働市場の流動化を促進することで、賃金上昇率を物価上昇率以上に引き上げる。

  • 財政再建: 中長期的には、財政再建を進め、将来世代への負担を軽減し、財政の持続可能性を確保することが重要。

政治家にとって、一見わかりやすく「みんなが嬉しいお金の配り方」や「減税アピール」は票につながりやすいもの。SNSやメディアでの発信力が強化されたいま、難解な経済理論を語るより、キャッチーなフレーズを投げかける方が圧倒的に拡散力が高いのです。

しかし、本来ならば景気やインフレ状況を見極めたうえで、財政政策や金融政策を慎重に組み合わせる必要があります。そもそもインフレ傾向下では、減税よりも家計の購買力を維持するための「賃金上昇・物価対策」が急務です。

バラマキや減税という言葉は、短期的には「みんなが得をするような気分」にさせてくれますが、それでインフレが止まらずに実質賃金がどんどん下がったら、本末転倒です。

経済とはじわじわ効いてくる複雑な仕組みで動いています。バラマキや減税で一時的に目先の支持を得るよりも、教育投資や生産性向上策、将来的な賃金アップのための産業構造改革など、「長い目で見た施策」を打つほうがよほど重要です。

ポピュリスト的な演説に惑わされる前に、「いまの日本が直面しているのはインフレなのかデフレなのか、景気はどう動いているのか」という現実をきちんと直視する必要があるでしょう。甘い言葉に乗っかりすぎると、そのツケはやがて家計や国民経済全体に返ってくるのです。政治家のおいしい話を聞いたら、まずは一歩引いて、経済の仕組みを改めて確認してみることをおすすめします。

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