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2024年はまだデフレなのか? デフレ脱却しているのか?
「日本はまだデフレ?」説が生き残っている理由
近年、街ゆく人々に「日本はデフレだと思いますか?」と問いかけると、意外と「はい、ずっとデフレのままだと思います」という答えが返ってきます。
「いやいや、もう物価上がってるよ!」と突っ込みたくなるけど、実際に総務省の消費者物価指数(CPI)や各種統計データを見てみると、確かに1990年代後半〜2010年代前半までの長〜いデフレトンネルを引きずったイメージが強すぎるのです。ある意味、日本人の心理には「デフレ=日本の自然状態」「物価が上がらないのが当たり前」という図式が長く染みついてきたので、いまさら「インフレになりました」と言われてもピンとこない、というのが正直なところ。
「もうデフレ脱却したでしょう?」説が増えている理由
しかしながら、2023年あたりから見ると、CPIは日銀の目標である2%を上回る水準で推移した時期もあり、「あれ、これってインフレ?」と気づく人が増えてきました。
2024年に入っても、食料品を中心に値上がりのニュースが後を絶ちません。
スーパーでいつもの冷凍食品がこっそり少量化されてる(いわゆるステルス値上げ)、コンビニのおにぎりが10円上がってる……なんて例を挙げればキリがありません。
実際、国際的に見てもエネルギー・食料価格の高騰が影響しており、日本だけ妙に値上がりしないという状況はほぼ消えつつあります。
「あの超低物価だった日本ですら値上がりしてる!」と、海外の投資家たちが目を丸くするような時代になったのです。
米山隆一のツイートを読み解く
さて、そんな中で注目を集めたのが、米山隆一のツイート)です。
ざっくり要約すると、
「長期的な物価上昇率を見ると、1990年以降インフレではないものの(=いわゆる爆上げのインフレにはなっていない)、
かといってデフレ(=物価が下がりっぱなし)でもない。
なのになぜ日本中が『デフレだから停滞』『デフレ脱却すればすべて解決!』と思い込むのか。それこそが停滞の原因では?」
といった趣旨ですね。
ここがポイントで、「デフレだ」と言う人と「インフレだ」と言う人が、本当は話す土俵がズレている可能性が高いのです。
・「政府目標の2%達成?」という視点では「インフレ進行中」ですよと言える。
・「昔みたいにバブル級にガンガン物価が上がった?」という視点では「いや、全然そこまで行ってない」という話になる。
こうした「どの程度の物価上昇をインフレと呼ぶか」という定義のすり合わせがなければ、永遠に「まだデフレ!」「もうデフレ脱却だ!」と水掛け論が続くでしょう。
実際のデータでみる2024年現在
では、もう少し具体的な数字を見てみましょう。
最新のCPI(生鮮食品を除く総合ベース)では、年率1〜3%程度で推移している月が多いのが現状です。もちろん、月ごとに乱高下もしますし、エネルギー価格の影響で大きくブレますが、少なくとも「物価上昇率がほぼ0%以下が常態化する」という典型的デフレの状況ではありません。
あくまで「相対的に穏やかなインフレ」
ただし、アメリカやヨーロッパで一時期5%以上に跳ね上がったのに比べれば、相対的には「穏やかなインフレ」です。
日本人感覚では「いや、もうめちゃくちゃ上がってるんだけど?」と実感するかもしれませんが、世界基準で見れば「ようやく他の先進国並みに値上がりしてきた」という程度だったりします。
5. ポピュリストの「デフレ脱却・インフレ論」を斬る
選挙のたびに「デフレ脱却!」と大声で言う政治家、いますよね。どこかの玉木とか江田とか。
たしかに、経済政策としてデフレ脱却はひとつの旗印になりやすいのですが、実際には上で触れたように「なにをもってデフレと判断するか?」が曖昧なまま叫んでいるケースが多いのです。
例えば「賃金も全然上がらないし、実質賃金がマイナスだから実質的にはまだデフレだ!」という主張も、言っていることが完全に間違いとは言えませんが、「デフレ=物価が下落し続ける」ことなのか、「実質所得が伸びない状態」なのかを混同してしまうと、話がややこしくなります。
また、インフレを起こしたとしても、賃金が追いついていなければ生活は苦しいまま。「インフレをとにかく起こせば解決!」と言われても、「いやその先に来る高い物価に給料は追いつくんですか?」となるわけです。
結論:日本は「超ど真ん中のデフレ」ではないが「インフレ」でもない
デフレ完全脱却?
少なくとも「物価がマイナス成長に沈み込むような状態」では現状ないため、狭義には「デフレ脱却」と言ってよい面がある。インフレ進行中?
国際的な物価上昇に連動して、日本もここ数年はCPIが上昇傾向にある。したがって「インフレ傾向だ」と言って差し支えない。
しかし、米山氏が言うような「デフレが原因で日本停滞」という思考停止な決めつけは疑問。そもそも日本の停滞原因は、少子高齢化や企業の生産性向上が進まない、賃金体系の硬直化など複合的な要因が山積みです。
(ここに触れると長くなるので割愛)
「2024年現在、日本はまだどっぷりデフレなのか?」
消費者物価指数(CPI)は概ねプラス成長。マイナス圏に陥っているわけではないので「ガチガチのデフレ」とは言えない。
「もうインフレに振り切れてるのか?」
他国と比べるとインフレ率はそこまで高くない。日本人の感覚だと十分に値上がりしているように感じるが、国際水準では「落ち着いた部類」。
「デフレ脱却すればすべて解決するのか?」
そんな単純ではない。停滞の根本原因はデフレだけではなく、少子高齢化や規制、労働市場の問題など複合的。
長いのでまとめる
というわけで、2024年現在の日本は「超絶デフレの底」からは抜け出しつつあるけれど、だからといって「実感的に豊かになった〜!給料も倍増だわ〜!」というレベルには遠い、微妙〜なポジションにいます。
物価は上昇していますが、賃金はそれほど上がっていません。むしろ、実質賃金はマイナスになる月も多い状況です。つまり、我々の生活は、物価上昇に追いついていないのです。これは、どういうことか?そうです、悪いインフレです。
そんな中、「デフレ脱却はアベノミクスの成果だ!」と胸を張る政治家もいれば、「いや、まだデフレは終わっていない!」と反論する政治家もいます。彼らは、自分たちの主張に都合の良いデータだけを引っ張り出してきて、我々を説得しようとします。
後味の悪い答えにはなってしまいますが、結局のところ、日本経済がデフレなのか、インフレなのか、はっきりとした答えを出すのは難しいのです。経済は生き物であり、常に変化しています。大切なのは、一時的な現象に一喜一憂するのではなく、地に足をつけて現状を見つめ、自分たちの生活を守るために何ができるかを考えることです。
我々は、ポピュリストの甘い言葉や、メディアの煽りに踊らされることなく、賢く、そしてしなやかに、この物価の迷宮を生き抜いていきましょう。