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【教官の本音】アメリカでパイロットになるな!

 パイロットといえば、素人からすると、憧れる人もいるでしょう。

 しかもアメリカでパイロットをするといえば、英語も堪能で、かっこいいのでは?と思うでしょう。

 しかし、私に操縦訓練を指導してくれた教官たち(多くがパイロットとして乗務経験あり)が、パイロットはやめたほうが良い、仕事を辞めたいと呟いているのです。

 私がロサンゼルスで訓練をしていた時は、パイロットになって良かった!と本音で言っている教官にお会いしませんでした。

 私が訓練をしている時も、「事業用操縦士(プロ資格のこと)は取らなくて良い、プライベートで楽しみなさい」とアドバイスされました。

 今回は、飛行機に興味があったはずの彼らが、なぜパイロットになったことを後悔しているのか、彼らから聞いた本音をもとに解説したいと思います。

(1)職を失うリスクが高い

 航空業界は、景気の影響を非常に受けやすい業界です。

 さらにアメリカとなると、終身雇用も無いので、簡単にクビにされてしまいます。

 実際、自分は一生懸命やっていたつもりでも、ある日突然クビになる経験をした教官がいました。

 いくら仕事が好きでも、景気や会社の業績、人員整理等、自分がコントロールできない要因によって職を失うリスクにさらされるのは、精神衛生上も良くないですね。

 私は元公務員ですが、そのことを教官に伝えたら、「俺も公務員の方が良かった」と言っていました。

 その教官はクビになった経験があり、ここ最近は教官の仕事や航空会社のパイロットの職を転々としているそうです。

(2)給料の変動が大きい

 教官たちが口をそろえて言っていた言葉が、「金が無い」でした。

 4人の教官(年齢は30歳前後)たちは、多くても貯金100万円程度しかないそうです。

 彼らの知り合いの同年代のパイロットが、貯金1000万円あると知ったとき、「スゲー」と驚いていました。

 皆さんの多くが、貯金がほとんど無く、アルバイトをしていました。

 教官はともかく、航空会社のパイロットなら、待遇も良いのでは?と思うかもしれませんが、それは会社によるそうです。

 ある教官(年齢は30歳)は、あるエアラインでパイロットをしていた頃、月々の手取りは4000ドルだったらしいです。

 この給料は、この年齢のパイロットの収入としては標準だそうです。

 日本円に換算すれば、手取り50万円以上。

 十分な金額のような気がしますが、アメリカは日本よりも遥かに物価が高く、余裕のある暮らしはできないそうです。

 しかも、職を失うリスクがあり、それなりの給料をもらっても、安心できない。

 また、教官の仕事をする場合、時給換算するとアルバイトと同じくらいになり、一定の貯蓄が無ければ、生活が非常に厳しいです。

(3)仕事がつまらない

 私はこれが一番驚いたのですが、彼らは、パイロットの仕事が楽しいとは思わないそうです。

 というのも、会社に就職して飛行機を操縦するとなると、決められたことを決められたとおりにこなすだけで、面白みは無いそうです。

 指図されるがままに単調な仕事(私には単調に思えませんが)をこなす、つまらない日々を送っているそうです。

 自分の創造性が全く不要な仕事と言うのも、結構辛いかもしれません。

 私が聞いた話によると、多くのパイロットが、プライベートライセンス⇒プロライセンス⇒就職と段階を踏むにつれ、眼が淀んでくるそうです。

 最初のうちは飛行機の操縦が面白く、眼を輝かせて訓練するらしいのですが、ステップアップするにつれ、つまらない毎日に嫌気がさして目が淀むそうです。

 私に指導してくれた30歳の教官も、とても30歳とは思えないほど老け込んでいました。

 それが仕事のせいなのかは不明ですが、私が想像したような、キラキラした感じのパイロットの教官はいませんでした。

(4)人生の選択肢が少ない

 教官の多くは、エアラインをクビになったか、エアラインを辞めて転職活動中か、プロライセンスを取得したばかりで飛行時間を稼いでいる人です。

 教官の待遇が良くないことはお伝えしましたが、なぜ彼らは、そんな教官の仕事にしがみつかざるを得ないのでしょうか。

 それは、教官としてでも飛行を続けていないと、航空会社の就職ができなくなるからです。

 アメリカでは、プロライセンスを保有しているだけでは就職できません。

 直近で一定の飛行経験が無ければ、採用されません。

 確かに、ライセンスは昔取ったけど、10年間飛行機に触っていない人は即戦力としてみなされないでしょう。

 このため、何らかの仕事で飛行機を操縦し続けないと、パイロットとしての人生が終わる可能性があるのです。

 つまり、プロのパイロットとして生き続ける道は、ブランクを空けずに航空会社に就職するか教官をするしか無いのです。

 常にこの二つしか選択肢が無い状態で生き続けるのは、なかなか大変かもしれません。


 


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