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lcopo
【ショートショート】拡張現実ドッキリ!
藤井プロデューサーは思い付いた。
「拡張現実」を芸人に見せて、落とし穴まで導くドッキリはどうだろう。と。
【拡張現実とは】
現実世界にデジタル情報を重ねて表示し、現実を拡張する技術のこと
早速、「ドッキリ芸人」にVRゴーグルを被せて一日生活してもらう。
感覚を麻痺させるのだ。
もちろん「ドッキリ芸人」も「プロ」なのですぐに全て理解して演じられる。
ただ、どうしてもリアクションがわざとらしくなってしまうので、このフェーズは必要なのだ。
もうひとつは視聴者に「納得感」を与えたいのだ。
だからまあ「演出」なのだ。
「ヤラセ」ではない。
その辺りは視聴者が一番分かっていない。
ちゃんと「出演者」と表示しているので分かってほしい。
映画で同じことをしても怒らないのに、テレビだと本気でクレームを入れてくる。
まあその辺は「それだけ真剣に観てくれている。」と良いように解釈している。
*
「ドッキリ芸人」の好きな「プレミアスニーカー」が売っている店に落とし穴を掘ってある。
実際はだだっ広い「山砂の採取場」である。
不自然に置かれた「ナイキのエアジョーダンの映像」に勘づき、吸い込まれる「ドッキリ芸人」。
音もなく落とし穴に落ちる。
この辺りは高飛び込みの選手並みである。
そして、キャッチャーフライが上がったときのマスクを取る速さと同じ速さでVRゴーグルを大袈裟に外し、ここで「現実」に戻ったよ。
と丁寧に示す。
いいぞ!
不満そうな表情筋の使い方。そしてカメラを見つけて脱力する美しい流れ。
すっかり魅了されて涎が出てた。
俺の人選に間違いはなかった。
こうしてひとつの素材が出来上がる。
今回も良い出来だったと思う。
*
「今回もなかなか良い仕事が出来たと思う」
生理食塩水で満たされた水槽の中で、ドッキリ芸人の剥き出しの脳はそう思った。
(終わり)