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katakana_chan
【ショートショート】校則
ウチの高校は未だに校則が厳しいので、
俺は「トランスジェンダー」になることにした。
髪は染められないが、長髪にしても良くなった。
制服はお金のかかるモノだから希望しないと言ったら「親孝行だねぇ」と言われた。
っしゃー!狙いどおりだ!
クラスメイトは俺が「ノーマル」だということを何となく察している。
まあ、中学のとき率先して卑猥なことを言いまくってたからな。
俺を見習って、「トランスジェンダー」になった男子が数名出て来た。
皆、やるじゃないか!
その流れで、女子の中にも「トランスジェンダー」をカミングアウトする人が出て来た。
でも、どうやら彼女は性の不一致で本当に苦しんでいたらしい。
俺は、「法の抜け穴」的な軽い気分でトランスジェンダーになったことを後悔した。
ある日、トランスジェンダーの「元女子」が俺に近づいて来た。
何を言われても仕方がない。
覚悟はできていた。
「トランスジェンダーに「なってくれて」ありがとう。」
「え?」
「俺は今までずっと苦しんで来た。
君が「トランスジェンダーだ」という話を聞いたときは正直腹が立った。
でも、その後勇気が湧いて来た。
「あぁ。別にいいのか。そんな感じで。」
と思ったんだ。
俺の心は男だけど、俗に言う「男らしい男」でもない。
「大人しいタイプの女子」が「男子だった」ということをカミングアウトしても、
女子から気持ち悪がられるだろうし、
だからといって、今更男子のグループにも入れない。
だから「大人しくしておこう。」って決めてた。
男子とか、女子とか、社交的とか、大人しいとか。
そんなこと軽々と超えて、その場で一番居心地良い選択をした君はすごい。
と俺は思ったんだ。」
そう言って、セーラー服にベリーショートヘアの「彼」は自分の席に戻って行った。
(終わり)