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【ショートショート】古い時計

コロナウイルスに感染し、寝込んでしまった。

寝室のベッドから掛け時計で時間を確認するか寝るかしかできずにいた。
ふと気づいたのだが、この時計、電池を替えた記憶がない。たしか、父がホームセンターで買ってきた時計だったと思うが、亡くなったのは30年以上前であり、そこからは一人暮らしである。
そうなるとこの電池は少なくとも30年は電池交換していないことになる。

コロナが完治し、時計のことも忘れてしばらく普通に生活していたのだが、ある日、急に思い出した。
コロナでおかしくなっていた訳ではない。
確かに、電池交換した記憶がない。
掛けてある時計を外し、電池ケースを開けると単三電池が2本入っている。
電池は購入当時に付属していたらしい、よく分からない海外メーカーのものだった。
ペンライトが単三電池2本だったことを思い出し、好奇心からそこに入れ替えて頻繁に使用しても一向に電池切れを起こさない。
試しにライトを点けっぱなしにしてみたが何日経っても光が弱くすらならない。
何かの間違いを色々と疑ったが何一つ思い浮かばない。

ついにこれは「永久機関」ではないかと本気で考え始めた。

電気に疎いので、どういう原理なのか全く分からないため知り合いの電気工事をしている人に見せたところ、
「そんなことはあり得ない。電池を替えたのを忘れただけだろう。」と言われ
「疑うなら持って帰って試して欲しい。」と言ったが馬鹿らしいと思われたのか、
「分かったから」という感じで取り合ってもらえなかった。

インターネットで大学のそれらしい学部にメールしてみたが、返信がない。

Yahoo知恵袋などにも投稿してみたが、罵詈雑言の類いまで言われた上に、ベストアンサーは「永久期間は存在しません」という趣旨の当たり前の回答で片付けられてしまった。

それ以来、いつか信じてくれる人が出てくるかも知れないのでライトはつけっぱなしにしているが、薄気味悪さもあり、引き出しにしまって、時々確認している状態である。

この科学の時代に検証の土俵にさえ立てず、地動説を一人で唱えているような変人扱いを受けるとは思いもしなかった。

もう一年以上ペンライトは光り続けている。

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