見出し画像

【ショートショート】ごめんなさい

「ごめんなさい。」なんて言わないでほしい。

そんなに自分を責めなくて良いのに。

俺が何か喋ると至らないところを探し出し「ごめんなさい。」と謝ってくる。

この前も、モノの位置がいつもと少し違っていたから「これ、ここで良い?」と尋ねると
「ごめんなさい。」だった。

「今日雪が積もったね〜。」
出来るだけ「ごめんなさい。」が出ないように陽気な語尾で話しかける。
「ごめんなさい。」
なんで?
「除雪してなかった。」
あーそうか。守りが甘かった。
俺のチームのDF(ディフェンダー)が股抜きを喰らい華麗なゴール。

それなら、彼に全く関係のない事象で俺のゴールを守り抜いてやる。
「このニュースはひどいな。」
「ごめんなさい。」
え!
「チャンネルそのままだったから。」
サイドから不意をついたミドルシュート!
ゴルゴルゴルゴルゴーーール!!

チクショー。
俺の心の中の話はどうだ?
「最近なんか調子が良いのよ。何やっても楽しい感じなのよ。」
どうだ!
「ごめんなさい。」
は?どこ?もう11人全員がゴールに横並びで塞いでいたはず?これ以上の「守備型陣形」は思い付かない。
「ボクを見てたらそう感じるんでしょう?もう少しボクも明るくなれれば良いんだけど。」
俺すごい遠回しな嫌味言ったみたいになってる!
これは審判の目から見えない場所で接触されたことにして、うまくペナルティーキックを取っての得点…!
レッドカードだろ!
俺は両手を広げて部屋中を歩き回り、虚しく潔白をアピールする。

ふと、今日はゴミの日だったことに気づく。
「ところでゴミ捨ててくれた?」
「え?今日ゴミの日だった?あー。確かにそうだ。今週祝日絡んでたから曜日感覚狂ったのかな。」
え!言い訳?
ここは「ごめんなさい。」だろう!
なんならウチのキーパーだってゴールポストに寄りかかって休憩してたし。

ははーん。
さてはコイツ、面倒臭いから「ごめんなさい。」と言ってるだけだな。

どうにかしてコイツから「ごめんなさい。」と言わせてやる!

(終わり)

いいなと思ったら応援しよう!