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【毎週ショートショートnote】濃い古墳

「どいつもこいつも薄っすい古墳ばかり造りやがって!」

古墳作家の古墓任三郎氏は怒髪天を衝いていた。いや。衝き過ぎていたのかもしれない。

「こんな薄っすい副葬品じゃ、死者も報われねぇよ!
もっと濃厚に!
赤!金!黒!
消臭スプレーのパッケージを思い出せ!
最強の金!その上は黒!だろうが!」

「うぃっす!」

「コンコンコンコンコンコン」

石室内に指し棒の音が鳴り響き、
見習たちは整列する。

「だれー。これデザインしたのー。」

突然のオカマ口調に見習たちは吹き出しそうになり全員思わず顔を背けた。

「お前ら本気でこの仕事やってるのか!
…分かった。
お前ら前方後円墳10周!」



実は、古墓氏も悩んでいた。
自分の古墳への熱い想いがなかなか見習たちに伝わらないからである。

そう悩みながら今日も酒を煽る。
そしてそのまま目覚めることはなかった。

古墓氏の作業机に一枚の古墳画が残されていた。
見習たちはその濃厚さに度肝を抜かれた。
それは例えるなら原液を煮詰めたカルピスだった。

ひとりの見習が搾り出すように言った。
「濃い、新墳…!」


そうなのです。

いくら古墓氏でも新たに「古墳」を造ることだけは、出来なかったのです。

おしまい

(489字)

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濃い古墳よ。ん? 3四歩!?濃い子!
(こいこふんよんさんよんふこいこ)

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