
【毎週ショートショートnote】恋花粉
毎週末、僕は彼女と会っている。
一緒に居ると落ち着く。
「存在」が好きだ。
彼女は若くない。
恐らく彼女にとって「結婚するかどうか」という問題は差し迫った事だと想像している。
だから僕は結婚を前提に付き合っている。
結婚は現実だ。
色んなリスクを想像する。
もし、家事が苦手だったら?
僕が全部やれば良いじゃないか。
もし、彼女のことを好きでなくなったら?
たとえ彼女がどんな姿になっても、
たとえ彼女の心が全部変わっても、
僕が「今のこの気持ち」を忘れなければ好きでいられるじゃないか。
強い春風が砂を巻き上げるような日に、
僕は彼女にプロポーズした。
風がますます強くなって、彼女の返事が聞こえない。
少しずつ彼女の末端がサラサラと風に流されて行く。
それは徐々に身体の中心に向かい、
遂に彼女、いや「恋花」は粉になってしまった。
僕は集められる限りの「恋花粉」をビンに詰めた。
僕と「恋花粉」は今も仲良く暮らしている。
僕があの頃の気持ちを忘れていないからだ。
(411字)
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【廻天の回文】
恋花粉、フン。米な、米粉。なめこ、んふんふ 蚕?