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【毎週ショートショートnote】釜揚げ師走

「12月は新メニュー『釜揚げ師走』で月間最高益だ!」

店長が熱くなっている。
俺はうどん屋で働いている。
社員はリーダーの俺とI藤の2人。
あとはパートさんがシフトしている。
何が「釜揚げ師走」だ。
釜揚げうどんに揚げたしらすが乗ってるだけじゃないか。



釜揚げ師走は飛ぶように売れる。
I藤はイライラした手つきで湯あげしている。
分かるよ。
一日中それだからな。
こんな糞ブラック会社絶対辞めてやる。
レジを打つパートさんも無言だ。
マスクの下の口角は顎まで下がっているだろう。
閉店後も仕事が無限にあり帰りが午前になる。
I藤も無言だ。

12月31日

店長がやって来た。
「売り上げを発表します!」

「最高益、更新!」
I藤が涙を流して店長と抱き合う。
パートさんたちもマスクを取ってアンパンマンのようなピカピカの笑顔で飛び跳ねている。

釜揚げ師走サイコー!
いい一年の締めになりましたー!

俺はサクサクの揚げシラスの中の
火の通っていないゆでシラスだったらしい。

(410文字)

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