図工2だった私が日本画で賞を獲る〜人生、何が起こるかわからない〜
子供の頃、私は図画工作が大の苦手でした。
小学校の授業中、周りの子がテキパキと作品を仕上げていくのを横目に、
私はいつも焦っていました。
時間内に完成することなどほとんどなく、
こっそり家に持ち帰り、父に手伝ってもらうのが常でした。
もちろん、そんなズルはすぐに先生にバレてしまうわけで、
通知表の図工の成績は、5段階評価で常に「2」。
今思えば、父には本当に申し訳ないことをしました(そして先生、ごめんなさい!)。
一方、両親はアート好きで、幼い頃から美術館によく連れて行ってもらっていました。
私は、自分で絵を描くのは苦手でしたが、
絵を見るのは決して嫌いではありませんでした。
かなり一枚一枚を、しつこく嘗め回すように鑑賞する方でした(今でもそうですが)。
そんな私が、数年前、人生の折り返し地点も過ぎた頃、
山口蓬春さんの日本画を見て、
その繊細で美しい世界に、なぜだか強く惹きつけられ、
何を血迷ったか、
「急に山口蓬春さんのような絵を描いてみたい!」
と、とんでもないことを思ってしまったのです。
軽い気持ちで近所の絵画教室の門を叩きました。
初心者向けの教室だと思っていたのですが(実際、初心者も歓迎)、
入ってみると、美大を出た方や、セミプロのような、腕に覚えのある方ばかり。
少々後れしてたものの、教室の先生やアシスタントの方々は、とても優しく、
不器用な私に根気強く、手取り足取り教えてくださいました。
そのおかげで、なんとか楽しく続けることができたのです。
描くスピードは人よりずっと遅く、人の数倍の時間がかかってしまいます。
それでも、少しずつ、丁寧に筆を重ねていくうちに、
絵が形になっていくのが嬉しくて、夢中で制作に打ち込みました。
そして、3年の月日をかけて、ようやく一枚の絵を完成させることができました。
それは、鮮やかなオレンジ色が印象的な、凌霄花の絵です。
完成した絵は、教室が主催する展覧会に出品することに。
まさか自分が展覧会に出品する日が来るなんて、夢にも思っていませんでした。
そして、さらに驚くべきことが起こったのです。
なんと、私の凌霄花の絵が、「講師賞」を受賞したのです!
選んでくださった講師の先生からは、
「これだけ時間も思いもこもった作品はなかなかないので選ばせていただきました」
という、なんとも微妙なコメントをいただきました(笑)。
「それほど大きな絵でもないのに、3年もかかってしまって~」
と照れくささと戸惑いを感じながらも、
私の制作過程をずっと見守ってくださった先生からの温かい言葉は、
とても嬉しかったです。
受賞の知らせを友人や知人に伝えると、
「おめでとう!」「すごい!」「さすが!」と、祝福と賞賛の嵐。
図画工作が苦手だった私が、絵画展で賞をいただき、
皆に褒められるなんて、まるで別世界の出来事のようです。
この経験を通して、私は改めて、何事にもチャレンジしてみること、
そして、諦めずに続けてみることの大切さを実感しました。
人生、本当に何が起こるかわかりません。
苦手意識を持っていたことでも、思い切って飛び込んでみれば、
新しい世界が開けることがあるものですね。