ショパンの誕生日にワルシャワでショパンを聴く
ポーランドのワルシャワへ行こう!と計画した本来の目的は別のイベントにあったが、ワルシャワへ赴く日が、フレデリック・ショパンの誕生日(2つの説があるらしいが、3月1日の方)ということに気がついた。
なんという奇遇!これは本場でショパンを聴かずしていられまいと思い、ワルシャワ市内のあちこちで開催されているショパンコンサートのうち、Fryderyk Concert Hallで、ショパン誕生日に合わせ特別に組まれていたキャンドルナイトプログラムを聴くことにした。
このコンサートホールは、ショパンの意向に沿った少人数のサロンサイズで、毎日夕刻に所属ピアニストによるショパンの曲が演奏されている。日本人ピアニストの方も所属されているようで、今度はぜひその方々の演奏を聴きに再訪したい。
格安エアライン利用のため、ワルシャワ・ショパン空港ではなく郊外のワルシャワ・モドリン空港での到着になり、市街までの移動で疲れたが、無事にホテルへチェックインし、わくわくして会場へ向かった。
ショパン音楽大学の教授を務めているという、Maciej Poliszewski氏による演奏。前半は思う存分に氏の手元を凝視しながら、スタインウェイから放たれる素晴らしい音の洪水に心酔した。シャンパンが振る舞われた休憩を経て、後半は前列に人が来てしまい手元がほぼ見れなくなってしまったため、ひたすら奏でられる音に全集中した。(やはりケチらず一番良いチケットを入手して、最良の席を取っていれば…と反省した。)
それはもう素晴らしかった。
ピアニストの聴き分けを細かくできるほど肥えた耳ではないが、本場かつ王道、穏やかで熟成された演奏。特別に設置された燭台の揺れる炎や、室内に程よく響き渡る、スタインウェイの華やかで時に柔らかな音色。
付け焼き刃的におさらいしたショパンの生涯や苦節に思いを馳せつつ、苦悩から生まれたであろうエネルギー溢れる音を聴いて、気持ちが自由にトラベルしていた。
特に思い入れの深い「英雄ポロネーズ」が演奏され始めたときは涙が滲んで、「ここでさすがにズビズビになるのはまずい」と正気に返りながらも、心臓が踊るように興奮していた。
ワルシャワ週末旅行の素晴らしい幕開けとなった。
プログラム
Ballade in G minor op. 23
3 Mazurkas op. 41
in E minor in A flat major
in C sharp minor Scherzo
in B flat minor op. 31
3 Waltzes
in C sharp minor op. 64
in A flat major op. 69
in E flat major op. 18
Grande Polonaise in A flat major op. 53
Etude Op. 10 No. 5 (Black Keys)