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読書:インナーゲームオブミュージック / ピアノ発表会

ピアノの先生の自宅で行われるホームコンサート。小さなこどもから大人まで、幅広い年齢層のピアノを習う生徒たちが集まり、半年間の練習の成果を披露する。
ピアノ歴3年半(日本で2年、イギリスで1年半)の私も、プログラムに名前を載せてもらうのが3回目になった。

聴衆は、こどもたちのそれぞれの家族や、近所の音楽好きな老夫婦。20人を超えるかどうかという人数なのだが、人前でピアノ演奏することが、こんなにも緊張し、プレッシャーに飲み込まれるものなのか、と知ったのは1年前のホームコンサート。

私の手や指はぶるぶる震えて勝手な動きをし、肩背中はプレッシャーでガチガチ。しまいにはめまいがして、自分が弾いている音が全然聴こえない。演奏が終わった瞬間、倒れるかと思った。
私は人前で歌ったり踊ったり、スピーチやプレゼンしたり、そういうことは苦なくできるタイプなので、ピアノ演奏ではズタボロになるのが自分でも驚きだった。

パリ・シャルル・ド・ゴール空港に置いてあるアップライトピアノ。


幼い頃からピアノを嗜み、海外の音大へ進学し、プロのピアニストとして演奏しながら様々な国の生徒に教える先生に、相談してみた。「人前で緊張せず、普段通りの演奏ができるようになるための極意は?」

そこでお薦めしてもらったのが「The Inner Game of Music by Barry Green with W. Timothy Gallwey(邦題:演奏家のための「こころのレッスン」ーあなたの音楽力を100%引き出す方法)」である。

もとは、スポーツ(テニスやゴルフ)を題材として研究・出版された本の音楽版である「The Inner Game of Music」にはどんな極意が書いてあるのかというと、ざっくり下記のようなことである。

・インナーゲーム(inner game)とは、パフォーマンスにおいて、演奏者の外側の世界で実際に行われるアウターゲーム(outer game)に対して、演奏者の心中で行われるもうひとつの勝負のこと。心の中のインナーゲームに勝つことが、アウターゲーム(実際の勝負や環境)に勝つための近道である。

・演奏者の心中で行われるインナーゲームにおいて、二人の自分がいると考え、それぞれセルフ1セルフ2とする。

セルフ1は、常にセルフ2の能力を信頼しておらず、あれこれと悪態や不安を煽るような言葉を投げかけてパフォーマンスを妨害し、結果に対して「評価」を下してセルフ2を非難する。

セルフ2は無意識的あるいは潜在的な身体能力を含んでおり、実際の運動機能を司っているとされる。

・セルフ1による妨害を防ぐためには、意識を「現在、この場所で起こっている事態」に集中することが重要であるとされる。これは、善し悪しの判断をせずに、「変化する知覚要素」に注意を注ぐことでもある。

Wikipediaより抜粋の上、一部改変

インナーゲームを制するには、「知覚の力(Awareness)」「意志の力(Will)」「信頼の力(Trust)」を鍛えバランスを取ることが鍵。
視覚・聴覚・触覚から得られる情報をジャッジせずに受け止め、目標・目的意識を強く持ち、セルフ1の声に惑わざれず自信の能力を信じること。そして「いまここ」に全集中力を注ぐこと。

本書にはこれらを鍛えるための具体的なエクササイズ事例やエピソードが書かれており、自分の演奏経験と紐づけて実践できる。

イスタンブール空港のラウンジに置いてあるグランドピアノ。ペダルが4本もある。


本書の内容をしっかり実践してみようと事前練習も含めて取り組んだ結果、3回目のホームコンサート参加にして、「演奏していてすごく楽しかった!」という体験になった。

もちろん緊張はしたし、ミスタッチをして耳障りの悪い和音を奏でてしまった部分もあったが、焦りすぎず、自分の音に集中して演奏できた、という自信につながった。とても嬉しい。

演奏する曲の難易度や習熟度、聴衆などが変われば、セルフ1が邪魔をしてセルフ2のポテンシャルを引き出せない場面もあるとは思うが、この日の成功体験を覚えていよう。
ピアノ演奏だけではなく仕事でのプレゼンやインタビューにも活かせそうなので、実践してみようと企てている。

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