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海外公演で目撃した Ado の凄さ

Ado THE FIRST WORLD TOUR Wish を体感した余韻と記憶が残っているうちに記しておこうと思う。
なお、私は音楽関係者でもなければ、専門教育を受けたわけでもなく、割と食わず嫌いの偏向タイプで、あくまで個人的な感想です。


とにかく力強い歌声、変幻自在で正確な音程

典型的な日本人の歌い方とは一線を画した野太い歌声、それを支える咽頭、腹筋と肺活量の強さ。
聴く人やタイミングによっては、声の強さや「がなり」を受け入れがたいこともあるかもしれないが、ドラムやベース、ギターにも押し負けない、際立った楽器としての歌声がファンを魅了してやまないのだと思う。それに加えて、瞬時に変わる声色、幅広い発声の使い分け、激しく行き来する音程ながら正確に捉えるセンス。

ライブでは、音源通りまたはそれ以上にやってのける(しかも激しく踊りながら)ものだから、それは誰しもが驚嘆してしまう。

楽曲がキャッチーで外国人にも歌いやすい

Adoへの楽曲提供者の顔ぶれがそもそも凄いのだが、曲の多くがキャッチーでものすごくライブ映えする。

乗りやすいロックでアップテンポな上に、「唱」「踊」「FREEDOM」「阿修羅ちゃん」のように観客がコールできるように設計されている(?)ような曲は、思いっきり声出しできて楽しい
「新時代」「逆光」「リベリオン」「愛して愛して愛して」のように、ところどころ英語や簡単な日本語で一緒に歌えることで一体感が高まるし、「ギラギラ」「クラクラ」といった擬態語は語感がエキゾチックながら覚えやすい。かと思えば、「マザーランド」「レディーメイド」「夜のピエロ」などは、洋楽の展開に似ていながらボカロの曲調も組んでいて、聴かせる系でもある。

アニメ曲とのタイアップによる知名度

この点はAdoの凄さ、というより海外での人気を広めた要因と言ったほうが正しいかもしれないが、世界中に熱狂的なファンがいるONE PIECEとのコラボで、映画『ONE PIECE FILM RED』の劇中歌を担当し、爆発的にファンを増やした戦略はすごい。
ボカロや歌い手文化が、まだまだ日本局所的なブーム、スタンダード(だと個人的には思っている)だったところを、大人気アニメとのコラボにより、一気に歌い手が世界の表舞台に出てきた。

ちなみに私も映画公開時に劇場へ観に行った。アメリカ人同僚で筋金入りのONE PIECEファンがいたので、会話のネタ集めという目的だったが、蓋を開けてみればキャラクターの「ウタ」が歌う曲すべてをAdoが歌っており、「ONE PIECEの映画というより、Adoのためのアニメ版ライブ映画だな」という印象を抱いたほどである。

ビジュアルがかっこいい

顔出ししていない歌い手は、絵師が描いたキャラクターやアバターを表向けの姿として使っているが、Adoのビジュアルはどれもアンニュイでダークでかっこいい
(往年の漫画キャラクターの美しい容姿や線画を融合して、現代風にアップデートし、Adoの特徴を盛り込んだ絵だなぁ、と個人的には思っている。)

今回のワールドツアーのキービジュアルも、Tシャツやエコバッグ、パーカーなどのグッズに展開されていたが、年齢性別国籍問わず誰が着ていてもかっこよかったし、Adoを知らない人も目を引くイラストだと思う。

「ADO」という名前そのもの

名前の由来は本人が語っているので置いておくとして、今回の海外公演の観客を見ていてつくづく思ったのは、「A-DO アド」という名前が誰しもに発音しやすく、覚えやすく、それでいてコールしやすい
たいていの言語で第一音に来る「あ」「A」は、会社名やアーティスト名の一字目に使われることが多いと思うが、Adoに関しても図らずしてそうなっている上に、名前全体が短くわかりやすい。
結果論かもしれないが、ネーミングが非日本語話者にも受けやすい、というのはすごいことだと思う。


日本でのヒットも、世界での熱狂的なファンの拡大も、本人の才能や鍛錬に加えて、クリエイティブチームの凄さやマネジメントの手腕もあると思う。
このタイミングで世界に打って出たことは素晴らしい判断だと称賛したい。才能溢れる人々が日本からどんどん国外へも発信をしていく契機になってほしいと勝手ながら願う。

最後に、ワールドツアーに合わせて英紙The Guardianに掲載されたインタビュー記事を以下に。「顔を出さずにどうやってライブをするんだ」と聞いてきたイギリス人同僚に共有したら、"Wow"と言っていた(笑)。

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