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読書:ロバのスーコと旅をする

私が旅をする目的はなんだろう、とノルウェーのオスロ市街を歩きながら考えた。音楽・芸術の鑑賞、自然・文化遺産の探訪、スポーツ・アクティビティの体験など、旅ごとにテーマは決めているが、一貫して「知らない世界を見聞したい」という欲求に突き動かされ続けているように思う。

そんな旅の道中、手にしていた本がある。「ロバのスーコと旅をする」である。

著者の高田 晃太郎さんは、新聞社での記者を経て、スペイン巡礼の旅を契機に、どこでも歩いたら行けてしまう旅の自由さに感嘆する。モロッコの遊牧民にロバの扱い方を教わってからはロバに魅了され、イラン、トルコ、モロッコそれぞれの地で手に入れたロバとともにひたすら歩いて旅をする。「ただロバと歩く」ことを目的にした旅だ。

私が著者を知ったきっかけは、ある日Twitterで、緊迫感ある投稿を目にしたからだ。中東をロバとともに旅していたときに、追い剥ぎに遭った経過を生々しく投稿していたのだ。
「ロバと一緒に中東の辺鄙な場所を歩いている日本人なんて、変な人に違いない」と思った。
それからというもの、日々更新されるロバの呑気な様子や、人との出会い、ヒヤッとするような出来事を見るのが楽しみになった。著者の職業柄もあってか、文章力や描写力が高く、著者自身の心の葛藤や自己問答に読み応えがあるのも魅力の一つだ。

それぞれのロバに名前がつけられてからはより一層親近感が湧くのは不思議だ。著者自身がロバの愚鈍さを嘆きながらも、ロバに対する愛着が深まっていくにつれ、いつか訪れるロバとの別れが哀しくなる。彼の旅を見守るフォロワーたちも、そんな気持ちが溢れているのが伝わってくる。
そんな中、著者の言葉に思わずフッと笑ってしまった。

旅に限らず、人生は出会いと別れの繰り返しだ。私たちはそんな当たり前のことを忘れがちになっているのかもしれない。(中略)
私が思い描いていたロバとの別れは、まさにヒッチハイクの時のようなものだった。
人生のある日、ただすれ違っただけの人とロバ。

高田 晃太郎 著「ロバのスーコと旅をする」電子書籍版 P205より抜粋

中東での旅を終え、本書を出版する頃、著者は日本でロバとの旅を開始していた。そんな旅もすでに1年を超えたというのだから驚きだ。
ただひたすらにロバと歩いて旅をする、を貫いていて潔い。

ときに笑わされ、ときに考えさせられる本書を読み終え、私の週末旅も終えた。週明け、久々に顔を合わせたトルコ人の同僚に「こんな日本人がいるんだよ」と、著者がトルコのニュースメディアに取り上げられた際の記事を紹介したら、「なんて変わった人なの!?」と驚いていた。トルコの人でもそう思うんだ(笑)。


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