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中国の学生に問う。「君たちはどう生きるか」
原発の処理水の海洋放出により、中国国内での反日感情が高まっている。
中国という箱庭の国で中国内での情報しか知らず、偏った情報をそのまま鵜呑みにし、流される人たちがどれだけ多いことか。
しかしそれに関しては何も中国に限ったことではない。この情報化社会で多くの人が何の根拠もない情報に翻弄されている。
もう中国人の反日感情というのはある意味デフォルトのところもあるし、仕方ない面もあるのだが、私は働いている大学の田舎のタクシーのおっちゃんが言った言葉を大事にしている。
「おれ、山口百恵好きなんだよねー。国と国はどうでも、俺たち民間人同士は仲よくしようなー」
だから、私は自分の学生たちにそのことを伝えてきた。
それなのに、一部の学生がSNSで
「日本語なんて勉強したくない! それより反日活動しなきゃ!」
なんて投稿しているのを見て、たいへんショックを受けた。
一体私が教え伝えてきたことは何だったのかと。
そして腹が立った。
反日感情を持つなとは言わないが、少なくとも私という日本人とこれまで交流しておいて、「日本は悪いことをした。日本人はみんな悪い」みたいな、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」の単純思考に本当に幻滅した。
それでもおまえらは知識と教養のある「大学生」と言えるのか!と。
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こんなTシャツを着て「反日いぇーい」とやってる頭の悪そうなキッズたちの中に、どれだけ歴史を学び考察し主義主張があってやってるやつらがいるのか。
とにかく、日本人みんな悪いと一緒くたの考え方には物申したかった。
そこでまずはこの授業から。
アルバトロス(異文化理解のために)
これは私がよくやる授業である。
架空の国アルバトロスについて
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「はい! 男尊女卑の国です」
「アジアの文化ですか?」
「時代遅れで古いですね」
そんな声が飛び交った。
しかし、ここで一つの大事な情報を与える。
「この国は土が神聖なものとされています」
だから、土に直接触れていいのは女性だけ。
食べ物も男が先に毒見して安全でおいしいものだけを女性に捧げる。
「つまりこの国は女尊男卑の国です!」
そしてここから別の話へ
「インドでは、道に牛がいても人はどけようとはしません。なぜか?」
学生たちは答える。
「汚いから?」
「凶暴で危ないから」
「いいえ、ある宗教では牛が神様で神聖だからです。だから当然食べません。ちなみにイスラムの人は豚食べませんよね? でもこれは神さまだからじゃありません」
その国やその宗教や民族の習慣により違うという話。
そしてさらにつっこんで言った。
「中国では犬を食べる食文化があるよね? 日本は一般的にありませんから、一部の日本人は『犬を食べるからひどい!』と言います。
でも私は知ってます。犬を家族のように可愛がって飼っている人たちも多いし、全員が犬を食べるわけでもないということを」
さらに私は話した。
「私はコロナ前に犬を飼っていましたが、冬休み帰国後、中国に戻れなくなり、悩んだ末に農家の人に預けて、そのまま盗まれたと聞きました。もしかしたら、もう食べられたかもしれない。農家の人が売ったのかもしれない。当時、その農家の人は収入が減って困っていたかもしれない」
実際、本当のところはわからない。
ただ一つわかるのは、私の犬はもうどこに行ったかわからない。
生きているのかどうかもわからない。それだけだ。
「でもそれで中国人はひどい!とはならない。それはあまりにも単純で愚かな考え方でしょう」
そして私は「想像力を持て」と言った。
この情報量が多い時代において、あまりにも自分では何も考えてなさすぎだと。
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そして、後半、ここからが宮崎駿レッスンである。
「君たちはどう生きるか」を通して伝えたこと
※以下、ネタバレあり
まず一番驚いたのは、宮崎駿の映画を観たことがないという世代になってきたということだ。
中国では新海誠監督作品が人気で、日本のアニメが好きというわりには宮崎駿も知らなければ、漫画が好きといっても手塚治虫の名前すら知らない。
もはやそんな時代である。
まず私は今回の映画は宮崎駿の人生と世界観を体験できるということを伝えた。
キムタクが声をあてている父親は宮崎駿の父親がモデル。
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私が言いたいのは、一貫して同じことである。
「ヘタリア」じゃないけど、国を人格化するなってこと。
この時代においてもみんなが戦争に賛成していたわけではないし、反対していたとしても、その恩恵で生きていることに苦しんだりもするってこと。
誰が加害者で誰が被害者とか簡単な思考で決めつけるなと。
まあ、そんなにはっきり言わんけども。
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そして私が一番学生たちに伝えたかったこと
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とにかく想像力を持ちなさいと私は繰り返し伝えた。
時代背景や年齢、環境がちがえば、同じ国の人でも同じにはなり得ない。
とはいえ、中国の強烈なプロバガンダによる洗脳BOT量産には抗えない面もある。
それでも私は若者たちにやはり期待したいのだ。
何しろ、これからの未来を作っていくのは若者たちなのだから。
どうか想像力を失わず、自分の考え方さえも「もしもそうじゃなかったら?」とあらゆる角度から考察してほしい。
これはまあ、私の個人的な願いだ。
私にとっては、日本も中国もそれぞれ、自分の大切な友だちがいる国なのだ。私が一番仲が良い卒業生の子どもが平和で幸せに暮らせる中国であってほしいし、私を育てたこの日本も平和で美しい国であってほしい。
この日本にだってクソみたいな人もいるし、いい人だっている。
日本人だからとか中国人だからとか国で決めつけたくはない。
わかりあえなくても、憎み合いたくはない。
そもそも人類がしてきたことは善行であれ愚行であれ、自分も同様のことをする可能性があるということを考えてほしい。
と、まあそこまでは言わなかったが、とにかく宮崎駿の今回の映画に感動した私は熱く語らせてもらった。
ちなみにこの映画は響く人とそうじゃない人がいるらしいが、私は宮崎駿という想像力の化け物の世界を体験できて、後半はずっと泣いていた。
今回の授業がどれだけ学生の心に響いたかはわからない。
それでも昨日、前述の「日本語勉強したくない、反日活動しなきゃ!」の子から長いメッセージが届いた。
「日本に対して民族的な感情のこじらせはあるが、日本人の中にもいい人も悪い人もいるし、一時の感情で先生を傷つける発言をして悪かった。私はこれからもがんばって日本語を勉強します」
要約するとこんな内容だ。
宮崎駿の映画を熱く語るただのオタクの戯言と思われてなかったようでよかった。
本当は、やりすごしてスルーしてしまおうとも思ったが、少なくとも私は、私が関わる身近な人たちには想いを伝えたい。
それで相手がどう受け止めるかは相手の自由。
ただ、わかりあえないとしても、わかってもらおうとする努力、伝えようとする熱意は、どんな人間関係においてもなくしてはいけないと私は思っている。