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コーディネーターはスワンボートに乗って Ⅰ § Inter nokto kaj mateno : Between night and morning §

 不規則な揺れで目が覚めた。暗い船室に射し込む、薄く、柔らかな光。狭く蒸した空間。寝床がひとつ、からになっている。ぐしゃっと適当にまとめられた毛布は、アイツのだ。

 甲板へ。進行方向にアイツのシルエット。長身。スラリとした手足。それなりに格好のついた後ろ姿だけど、アイツの喋り方と小憎らしい顔を思い出して、似合わねぇな、と零しそうになって、口元をきつく結ぶ。俺が起きたと気づけばアイツはきっと、まだ寝てろよ、と言うだろう。そしたら俺は、お前こそ寝てろよ、と言い返してしまう。戻ろう、アイツが振り返る前に。あの顔を見たら、すっかり目が冴えてしまうかもしれない。いや、もう平気。慣れた顔だ。
 
 慣れた?
 ウソだ
 
 慣れてなんかいない。気まぐれな揺れの中で眠ることも、隣り合った寝床にいるヤツらも、この世界も。

 朝までまだ時間がある。深く眠ろう。夢も見ないほどに、眠って、眠って、眠って。

 次に目覚めた時は、見慣れた天井が目に入りますように。



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