コーディネーターはスワンボートに乗ってⅨ⑫§ 親愛なる友へ : kara amiko §
「アイツら、ちゃんと片づけて帰ったのな……」
部屋は、いつも通りのオレの部屋。もしかして夢だったのか。誰もきていなかったのかも……なんて、そういうのは、やめよう。みんな確実に存在しているんだから。俺はもう、ひとりがいい、なんて言わないし、ひとりでいたって、孤独じゃない。
昨夜のことを思い出して、笑顔になった。自分がどんな顔をしているのか確かめたくて洗面所へ。鏡の前に立つ。そして気付く。着替えずに寝てしまったことに。アーロ製の服だから、シワはすぐに元通りになるけど。
「ま、いっか……あ」
予備のスーツをクリーニングに出すことを思い出し、俺はクローゼットを開けた。
「は……なんだよコレ」
開け放ったクローゼット。ド真ん中にかかっているのは、買った記憶のない、ネイビーのフォーマルスーツ。胸のポケットに、折り畳まれた紙。
おれたちのけつこんしきには
これをきてきてください
オレとおそろいのスーシです
またあそびにきます
ヒロミもまたきてわ
「……まだサプライズあったじゃねーか……なんだよスーシって。スーツだよ。バッカじゃねーのマジで……っとに」
笑わせんなよ
うっかり涙が出たじゃねーか
さては全部わざとだな
ふざけやがって
こんなことしてもらわなくても
俺は前より素直に笑えるようになったんだぞ
だけど……
ありがとう フィーノ
ありがとう みんな
ありがとう
カーテンを開ける。窓から見える河川敷。水面がこれでもかってくらい輝いている。あの川も繋がっている。アーロに流れ込む、どこかの運河に。この世界のどこかに、あの世界に繋がる流れがある。だから会える。きっとまた会える。
「会える……絶対に、会えるよな」
繋がり続ける、この広い世界のどこかで。
《コーディネーターはスワンボートに乗って 完》
イメージソング : ひとりぼっちのジョージ(THE PINBALLS : NUMBER SEVEN #4)