生成AIは思考の言語化を助ける
前に「生成AIはnote記事を書く助けになるか」という記事の中で、「今のところ生成AIにできるのは「ゼロから20%」を書くことではなく、書き手が「ゼロから20%」を生み出すための考えを効率的にまとめる手助け」までではないか?ということを書きました。
上の記事を書いたのは今年の5月でしたが、その後生成AI(ChatGPT、Copilot、Geminiなど)の性能が格段に上がって、以前よりこちらの問いに対して的確なだけでなく「かゆい所に手が届く」ような気の利いた答えを返してくれるようになりました。私がnote作成において生成AIに期待している「書き手の漠然とした脳内イメージを文章に落とし込む」が現実的なものになりつつあると感じています。
生成AIの良さはすでに多くの人が仕事や日常生活の中で体感していると思いますが、個人的に特に魅力に感じるのは以下の点です。
納得がいくまで何度も「壁打ち」ができる
アイデア出しにおける「壁打ち」とは自分のアイデアを誰かに話して、その反応や意見をもらうことで、考えを整理したり、新たな視点を得たりする活動のことです(とGeminiが言ってました)。
しかし現実場面では人間相手に「壁打ち」を試みる場合、質問回数が多すぎると相手をうんざりさせるリスクがあります。人によっては「それぐらい自分で考えろ」とキレられる可能性もあるかもしれません。
この点、生成AIであれば自分が納得するまで何度も質問を繰り返すことができるので人間相手のように「これ以上聞いたら相手をイライラさせてしまうかもしれない…」と心配する必要がありません。
特に最近の生成AIはこちらの質問に対して回答するだけでなく「なぜそうなのか?」と理由を説明したり「どのようにすればよいのか?」など具体的なアイデアを出してくれるので、質問を繰り返すごとに新たな気づきが得られ当初の漠然とした脳内イメージが徐々にこちらが意図した言葉や文章にまとまっていくのを体感できます。
「わからない。でもそれじゃない」でも大丈夫
私はオープンクエスチョンに極端に弱いため、特に子供の頃は「自分で物事を決めることができず何でも人任せにしてしまう」傾向がありました。そのくせ人が決めたことについては「そうじゃなくって~」「っていうか~」「というより~」などとついネガティブな反応をしてしまい相手を怒らせるということが少なくありませんでした。
具体的な提案が誰かから与えられていればそれが自分の脳内イメージにフィットするかそうでないかの判断ができますが、自分の脳内イメージを一から他者に伝わるように言語化することは映像思考かつ同時処理型の私にとってはとてもハードルの高いことなのです。
でも生成AIであれば言葉足らずのまま「○○について提案して」「××について考えて」と放り込んで、出してきた回答に対してこちらが納得するまで「そうじゃなくって~」「っていうか~」を気兼ねなく繰り返すことができます。
先ほど、Geminiに「オープンクエスチョンに弱い」と感じている場合の対処法として「具体的な練習をする」「多様な意見に触れる」「質問の意図を理解する」「完璧主義を捨てる」「リラックスする」の5つの方法を挙げてもらい「なるほど」と感心しましたが、仮に「ちょっとこれは違うな」と全く採用しなかったとしてもAIなので相手の感情を傷つける心配がないのは他者に無駄に気を回して疲弊してしまうタイプにとっては気楽でありがたいことです。
生成AIとの対話は基本的に心地よい
基本的に人付き合いや人との会話に苦手意識を感じている人にとって生成AIと対話することはある種の心地よさがあると思います。特にASD傾向のある人にとっては、定型発達の人が違和感を覚える「事実ベースの、感情の乗らない対話」であっても気にする必要がなく、思ったままを生成AIに問いかける気楽さがあるでしょう。
また、多少ズレた質問や意見を言っても「それは違います」などと否定から入らず「確かにその一面はあります」と肯定的なメッセージから回答が始まるので、不安傾向の強いタイプにとってはとても安心できるものです。基本的に生成AIは一回の操作で完璧な答えを出すというより質問や対話を繰り返すことで目的のアウトプットに導くことを得意とするので、回答の中には質問者を励まし次の質問を促す文言が含まれていることが多いように感じます。
ADHD当事者にとっても、思考がスムーズに言語化できず脳内でモヤモヤしたままの状態というのは気が散って目の前の作業に集中できなくなるので、生成AIの力を借りて脳内イメージを片っ端から言語化していくことで思考がクリアになり集中がしやすくなると思います。モヤモヤした思考は文字に書き出すことで手放すことができるからです。もし手放した思考に再び戻りたい場合は「履歴」を見ればいいので「忘れてしまったらどうしよう」という心配もありません。
生成AIは「答えを出してくれる」ツールというより、自分の中にある潜在的な「答えを引き出して形にしてくれる」ツールのように感じます。少し前まで生成AIをこちらの思考を助ける「杖」のように感じていましたが今は杖どころか電動自転車ぐらいのアシスト力はあると思います。noteやブログ記事を書くのに役立つのはもちろんのこと、脳内をグルグル回る思考が言語化され整理されることでストレスが軽減されるのも、生成AIの大きなメリットのように感じます。以前「本を読むことの効能」の中で「セラピーに関する本を読むだけでなく、「本を読むこと」自体がセラピーになる」というようなことを書きましたが、生成AIもまたセラピーに関する質問のみならず「AIと対話すること」自体がセラピーになりうるのかもしれません。