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【徹底解説】美容医療の「直美」問題!消費者・医療界からの懸念とは?

医師初期研修を終えたばかりの若手医師が、美容医療に進むケースが増えています…

直美」と呼ばれるこの医師たちは、美容医療の需要増加とともに業界で注目を集めていますが、未熟な手技やコミュニケーション不足が問題視されています.

直美の医師が全てダメと言っているわけでも、その意図もありません.
ただ現実にはこういう問題があるんだよということを、あなたに知っておいてもらいたいだけです.

この記事では、直美が抱える課題や消費者トラブルの増加、美容医療業界の現状について詳しく解説します.

1. 直美とは?


直美(ちょくび)」とは、医師の初期研修(2年間)を終了後、専門的な診療科での経験を積むことなく、すぐに自由診療の美容医療に進む医師を指します.

この現象は近年増加しており、厚生労働省の「美容医療の適切な実施に関する検討会」*でも議題に上がりました👀

*参考資料📖 厚生労働省:資料1 美容医療に関する現状について

2. 背景


・美容医療の需要増加
美容医療の施術回数は、2019年の123万回から2022年には372万2,000回と3倍以上に増加

・若手医師の割合増加
美容外科で働く医師のうち30代以下が50%以上を占め、20代だけでも10%以上、10年前と比較して若手医師の割合は急増しています

3. 美容医療の種類とその増加


★外科的手技と非外科的手技

・外科的手技
脂肪吸引、フェイスリフト、二重整形などの手術を伴う施術

・非外科的手技
ボトックス注射、脱毛、セルライト治療など
非外科的とされますが、侵襲(体に負担を与えること)を伴うことも多い

2022年のデータでは、外科的手技が85万8,000回、非外科的手技の主要3施術(ボトックス注射など)が152万2,000回と、多くの施術で体への影響が伴います💉

4. 美容医療のトラブル急増


★相談件数の推移

2018年:1,741件(医療サービス全体の相談件数の29.8%)
2022年:5,507件(同57.8%)

トラブル件数の増加には、美容医療に対する消費者の期待値の高まりや、医療ミスの増加が関係していると考えられます.

5. 直美が抱える2つの問題点


1. 未熟な手技

美容医療は、他の診療科と比較して手技が成否に大きく影響します.特に外科的手技では、経験不足が深刻なミスや不可逆的な結果を招くことがあります.

★美容外科学会の専門医制度
美容外科学会では専門医認定に次のような条件を課しています.

・連続して3年以上の正会員歴
・形成外科専門医の資格を有すること
・形成外科専門医研修終了後、さらに3年以上の経験があること

これにより、美容医療に必要な経験を積んだ医師を選別していますが、直美はこの条件を満たしていないことがほとんどです.

2. コミュニケーションの不足

美容医療の最終目標は「施術を受けた人の満足」です.しかし、消費者の期待値が現実とかけ離れている場合、医師とのコミュニケーション不足が原因でトラブルにつながることがあります.

★期待値コントロールの重要性
通常医療の目標:「救命」「治癒」「寛解」といった医学的成果
美容医療の目標:「美の追求」という主観的な満足度

このズレを埋めるためには、医療の限界を正確に伝える高度なコミュニケーションが必要です.しかし、経験の少ない医師にはこれが難しく、トラブルの温床となることがあります.

6. 厚生労働省の対応と今後の課題


★厚労省の取り組み
厚生労働省は「美容医療の適切な実施に関する検討会」を設置し、2024年11月に報告書を公表しました.この中で、直美の増加についても問題が指摘されましたが、医師の偏在是正の観点から「さらなる検討が必要」とされています.

★今後の課題

1. 若手医師の教育強化
  手技の習熟度を向上させる研修の整備 

2. 消費者保護の強化
  トラブルを未然に防ぐための情報提供と規制

3. 業界全体の質向上
  美容医療の標準化や専門医制度の普及

まとめ


直美の増加は、美容医療の需要が急増する中で生まれた現象です.

しかし、未熟な手技やコミュニケーション不足が原因で、トラブルのリスクが高まっています.

消費者の期待に応えるには、医師の技術向上や業界全体の質の向上が必要です.

あとがき


美容医療は、多くの人に美しさと自信を与える力があります.

しかし、その安全性と質を確保するためには、医師や業界全体の努力が欠かせません.

この記事が、美容医療の現状と課題を考えるきっかけになれば幸いです.

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No.28@呼吸器内科医
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