非正規ルート

道を踏み外した意義を求め続けるのがこの学園での学び方だと思う。

ここでいう「道を踏み外す」という表現には負の感情は無い。
しかし、道を踏み外すことには当然リスクも付きものだ。

先人が築いた道というのは偉大である。
その道を進み始めた一人目が居て、そこにけもの道を作った二人目が居て、多くの人たちの通行の末にそこに道ができる。
もしその道を踏み外せば、次は一人で新しい道を作らなければならない。
これは相当な労力で、努力で、あるいはリスクだ。

進路なんかでも、多数派がいる以上はその道が存在する。
小学校、中学校、ごく普通の高校での生活を経て大学を目指す。
そんな王道をいつのまにか歩いている。

さて、僕はこの学園に来た以上は、この王道を「踏み外した」と思っている。
一日六時間の時間割、部活、多くの普通が存在しないこの学園はまず王道ルートではないだろう。新宿を歩く「普通」をまとった高校生を見て、その度に痛感する。

ずっとこれが心残りだった。「普通」を知らないのだ。

強い負の感情を持った、道を踏み外した意識。
もうこのまま社会の軸からはみ出したままなのだろうか。と。
しかし分からない。社会不適合者であることが悲しいのか、それともただの普通への憧れなのか。

この学園が嫌いで、転校を考えて本気で勉強した時期もあるくらい追い込まていた。しかし、
今日やっとこの新しい道に誇りを持てるようになった。
そんな話をしたい。

学びの場の定義

3Q初日の月野さんより

学びの場である「学校」にどんな感覚を持てばいいのだろうか。
ずっとこの学園から学びを見出せずに、この学園を選んだことを後悔していた。
ずっとずっと、学校においての学びとは何なのかを考えていた。
二年間考え続けた末の一つの結論はこうだ。

明確に違う「学ぶ場所」と「学びを得る場所」

「学ぶ場所」というのは、新しい知識を吸収する途中経過を過ごす場所であり、普通の高校の授業や、塾や、自習室や自宅はこれに当てはまるだろう。
勉強する場所だ。
こういう意味で、この学園にも期待を持って入学した。
しかし、結果はどうだっただろうか。

僕はかつてプログラミングに興味を持っただけの中学生で、プログラミングを勉強したい!と安易にこの学校に入学した。
初めての6限、プログラミングの時間。誰かがプログラミングを教えてくれるのだろうか。それとも充実した授業や教材があるのだろうか。
答えはNO。そんなものは無かった。

この学園に入学した多くの人がこんな経験をしたのではないだろうか。
僕個人の経験に基づいて言えば、「学ぶ場所」としての期待があったのではないだろうか。
その期待に応えてくれない学園に失望してしまった。

中学生の頃と同じように、独学で、作りたいものを作る。
これ、家でもできるんじゃないの?なんて。
ただ場所が変わっただけでやっていることが何も変わっていないことに嫌気がさしていた。そんな一年、二年を送った。

そんな「学ぶ場所」としての期待をしていたのがそもそも間違いであったと気づくのには相当な時間がかかってしまったようだ。
この学園にどうにか価値を見出すために、「学びを得る場所」という価値について考えてみたい。

「学ぶ場所」と「学びを得る場所」
僕が作った言葉だが、明確に言葉を区別してこの違いを説明したい。
「学びを得る場所」というのは、新たな学びのスタート地点なのである。
外部的な刺激で、自分の知らない新たな学問と出会う地点。
「学ぶ場所」という、学びの途中経過に焦点を当てた場所とは明確に区別できるものなのだ。

キャンパス、あるいはSlackを見てほしい。
ここまで多彩に、目標や価値観や、性格や趣味の異なる人間が同時に存在する学園が他にあるだろうか。
横を見れば誰かが自分と違うことをしている。
どこまで横を覗いても、みんながみんな違うことをしている。
自分と違うことは、まさに刺激だ。
みんなが同じ授業を受けるごく普通の高校と区別して、ここまで恵まれた環境にどうして気づけなかったのだろうか。
この学園に、「学びを得る場所」という大きな価値をついに見出すことができたのである。

みんながみんな道を踏み外してこの学園に来ているからだろうか、僕はこの学園をずっと「全国の高校生から平均値を抜いて外れ値を集めた感じ」って言い続けている。多くはいい意味で。
非正規ルートは絶対にバカにできない。
その道を作るまでにどれほどの苦労があったか。僕は誰よりも理解者でありたい。また自分もその一員として、もっともっと道を進めていきたい。

最後に。今日はキャンパスでの卒業式だった。
いつも三年生とばかり話していたので、色々と思うところがあったが、
ふと一人一人との思い出を思い出していて気づいたのが、その多様性である。
誰もが違う道を歩いていて、とても刺激的だったなあと。
この文章を書くキッカケでしたとさ。

これ以上話すとN高の回し者ですかって思われるしやめておきます。
不満があって、死ぬほど不満があってのこの学校なので。
ただここでの人脈、その刺激に感謝しています。
来年は三年生。
ここまでの二年をシーズン1として、
来年はまた違った学園生活シーズン2を送れたらなあって思います。
悔いのない一年にしたいね。それでは。


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