黒ばらチームショー妄想小説
朗読の前、私はいつも同じ妄想をしている。
広い広い砂浜に立っている一本の桜の木。桜の花弁が散る下に、私は座ってただただ波の音を聞いている。
その波の音に身を任せながら、夢か現実か分からなくなる程の深い深い暗闇へと身を預けていくのだ。
「秀子、皆に朗読を聴かせて差し上げなさい。」
叔父様の声が遠くで聞こえた。
「…はい、叔父様。」
自分の声が卑猥な言葉を紡ぐ度に、ねっとりと重い何かがのしかかり、私を縛り上げていく。最初は苦しさで息をするのも辛かったが、もうその息苦しさも感じなくなってしまった。
どんどん、どんどん暗闇へと堕ちていく…
その時、カッと雷が光ったかのような一筋の強い光と共に誰かが勢いよく入ってきた。
眩しくて一瞬目が眩んだ隙に口が覆われ、言葉を出せないように乱暴に、だけど優しく私の唇を塞ぐ。
そして、私の手から手荒く本を奪うと、その場でぐしゃぐしゃに破り捨てた。破り捨てる度に怒りが伝わってくる。
縛りやすい位置でまとめられた髪と質素な服を着ている私の侍女、珠子が本を散り散りに破く後ろ姿を、私はただただ見つめていた。
やがて、珠子は何か決意したかの様に目を合わせ、私の手を取って光に向かって走り出した。
彼女の手を離さない様に私も強く握り返し、走った。
私の珠子、私だけの愛しい人
私の人生を壊しにきた救世主
あなたと出会って私は自由になれた…ーー
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