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魅せ方
勤め先の関わりで訪ねた障害者就労支援事業所のマーケットと展示が行われたのは、プラダの向かいのガラス張りのビルだった。
綺麗な色味の織り物が、メゾンの陳列ようにハンガーに掛けられている。
クリスマスのナチュラルな手作りのリースや、
籠に並べらた、カラフルなスノウボールなどのお菓子。
野菜の場所には、美しい緑の菜ものや、見事に育ったビーツもある。
ボルシチの味を思い浮かべながら、手に取った。
セロファンに貼られたシールは品よく統一されていて、再び買い求めたい時の目印になる。
奥に行くと、私が好きなアーティストの絵が飾られていた。
21歳のmifuyuさんの絵は、マチスの線を思わせる素敵な絵だった。
ご本人にお会いできる機会を得ることができた。
展示作品の中でも、ナタリー・ポートマンを描いた絵は、抑えた青の色味がヨーロッパを感じさせるようだった。
それぞれの絵に合う額装。
仕立て方。魅せ方。
障害者就労支援事業所で創作された作品が、ディレクションによって
とても素敵な作品として益々生かされることは、以前、別の場所で体験したことがあった。
紙を細かく細かく千切り丸めたものは、アクリルの立方体に収めると、
それは一つの世界観を持って、見るものに美しさを感じさせていた。
魅せる力のある方がまとめられた、小宇宙だった。
私には、それがまるで石庭のように感じられたのだ。
見惚れた。
そして、織り物で作られたギターのストラップは個性的で、今なら、タイダイの布と一緒にサイケな70年代のロックバンドのコピーなんかしたら、むしろ新しいんじゃないかしら?と思ったりしたのだった。
作り手は意図していなかったとしても、素敵な作品になる素材が溢れている。
商品化する際の一手間のセンスで、価値あるものになっていく。
様々なインスピレーションを受けた。
北欧のツィード風の布を使ったスピーカーを見たことがあるが、この個性的な織り物をあんな風にも使えないかしら?と想像を巡らせたり。
それを、どこに繋げて生産して、どこで販売していくのか。
そんなことを考えるのは楽しい。
今の仕事とは違うのだけれど・・・。
もしも叶うなら、そういうこともしてみたい。
作者自身にしか出せない繊細な色合いや、美しい線。
丁寧な作業による刺繍などの価値ある作品。
純粋な心が創り出す作品を手にすると、目にすると力がもらえる。
以前、メーカーのパッケージのディレクションをしていた時の、最初に物ありきで
そこに肉付けをしていく作業を思い出していた。
研究所から上がってくる試作品のコンセプトから、ターゲットを見極め、売り場を考え、対抗商品を絞って調査をする。
そこから、どんな色をベースに、どんな写真を撮影して入れて、すぐに特徴がわかるコピーを入れ込む。
小さい小さいスペースに、最小限に削って研ぎ澄まされた、限られたものだけを入れていく。
光らせるのか?マットに仕上げるのか?
色々な人が絡んで、その方達の思いをのせて世に出す。
そして、広告媒体にどう連動されるかを常に考える。
面白い作業だった。
ナタリー・ポートマンを描いた作品は、グレーのマウントをつけて、シルバーの繊細なレリーフのある額に収められていた。
とても、素敵だった。(許可なく写真の掲載ができず、残念である。)
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