白杖で歩く私が道で出会う愛すべき人々③ 駅員さんのぶっちゃけ話、でもなんでそれを私に?
私は一人で電車に乗るとき、よく駅員さんに案内を頼む。改札口で声をかけ、目的
の電車のドアまで誘導してもらうのだ。その道中や、ホームで一緒に電車を待ってい
る時間は、駅員さんとのちょっとした会話を楽しむチャンスになりうる。
たとえばこの前も、駅員さんが自分の生い立ちをしゃべってくれた。五十がらみの
威勢のいいおっちゃんだった。
「私ねぇ、今はこうして駅員をやってますけど、20年ぐらい電車の運転手をして
たこともあるんですよ」
へぇ。駅員と運転手って、同じ人が両方やるものなんだ。よっぽど電車が好きじゃ
ないと務まらないんじゃなかろうか。
」そうなんですね!駅員と運転手、どっちの仕事が楽しいですか?」
「運転手のがいいですね。人と話さなくていいですから。駅員は接客業ですからね
、いろんな人がいて、毎日いらいら、いらいらしてしょうがないっすわ」
そりゃ、そうだろうなあ。酔っ払いとかもいるし、急病人も出るし。最近は英語も
必須だろうし。駅員さんも大変だ。
…って、それを私に言うってどういうことよ。私もそのお客さんの1人なんですけ
ど?と、思わず心の中で笑いとともに突っ込みを入れた。
私との出会いが、この駅員さんの「今日のいらいら」に輝いていないことを願うば
かりだ。