【小説】やっと結婚できたと思ったら妻は家事をしない怒る女だった #21
引っ越した年の七月半ば過ぎ、会社から帰ると、涼子はテーブルの椅子にいて燻った煙草のようにぶすっとしている。目をぼんやりと伏せ、べそっかきのように下唇を突き出し、押し黙っている。そういう風采でいる時はたいていは「金がらみ」で、小遣いをもっとよこせとか何々を買えと言ってくる。だから、私は涼子の口を開かせないようあえて無視をし、さっさと料理の日の料理に取りかかり、話すつもりもなかったどうでもいい話題を口にし、心の中の何かの不満から涼子を引き離そうとした。しかし、涼子は適当に相槌を