【読了】寺地はるな「水を縫う」
寺地はるな「水を縫う」
「ダ・ヴィンチ」にこの作家さんの新作紹介ページがあって、涼しげな表紙とタイトルが印象に残っていた本。
主人公は同居している祖母の影響で手芸に興味をもっているが、母は「普通の」男子高校生のようにスポーツをしてほしいと思っている。
ほんのちょっとしたことがその人にとっての呪いとなることは本当によくあることで、その呪い自体が普通のことだと思われていることも多くて。
そんな呪いを抱えた主人公たちが、様々なきっかけで時にぶつかりながら少しずつ解き放たれ、自分の在り方を受け入れていく姿に、私自身の固くなっていた心もやわやわとあたたかくほぐされていくようでした。
自分を不自由にしているのは自分なのだなと改めて感じます。
派手な事件があるわけではないけれど、穏やかで落ち着いた語り口で紡がれる、温かくとても優しい物語でした。
(Twitter20230729投稿文の再掲)
・第9回 河合隼雄物語賞