【読了】辻堂ゆめ「トリカゴ」
辻堂ゆめ「トリカゴ」
タイトルが気になった本。
主人公の担当した傷害事件の被疑者が証拠不十分で釈放された。無戸籍だという彼女の後を追い辿り着いた工場には、何人もの無戸籍者が暮らすコミュニティがあった。
主人公は幼い頃にテレビから流れてきた育児放棄事件に強い影響を受けて刑事を志した正義の人であり、同時に困っている人を助けたいという情の深さも持ち合わせている。
事件を解決したい気持ちと同じぐらいの強さで無戸籍者を救いたいとも思っているけれど、正しさとは何なのだろうと感じてしまいました。
主人公が真摯に寄り添おうとしていればいるほど、その正義感のもたらすものに不安になり、けれどそのまっすぐさは嫌なものではなくて。
限定されたコミュニティ内で幸せならばそれでいい、とは思えないのは私も恩恵を受けられる立場だからだし、それをどうにかしたいと思うのは独善だし、偽善のようにも思えるしで堂々巡り。
主人公の追う事件はもちろん、無戸籍者たちの今後がどうなるのかずっと気になりながら読みました。
最後の結びだけ少し「ん?」となったけど、面白かったです。
(20240526投稿文の再掲)
・第24回 大藪春彦賞