【読了】古泉迦十「火蛾」
古泉迦十「火蛾」
TLで見て気になっていた本。
主人公は聖者たちについての伝記録を編むため、アリーという行者のもとに取材に訪れた。蝋燭の灯るテントの中で、アリーは自らと同じ名をもつ男の物語を語り始める。
TLでみた後、「ほんタメ」でもタイトルが紹介されたので早めに読んでおきたい気持ちになりました。
主人公、と軽く書きましたが舞台は12世紀の中東で、聖者というのはイスラム教の聖者をさします。仏教キリスト教なら若干の知識はありますが、イスラム教では全くのお手上げ。
といってもその都度説明がなされるおかげでよくわからないながらも興味深く読めました。
主人公はあるレアな宗派の聖者の話を聞くために行者アリーのもとに訪れるのですが、なかなか聖者の話に行きつかない。
アリーという男の来歴が丁寧に語られていく途中途中、章の区切りごとに主人公の心境が明らかにされるおかげで、こちらもこれは行者の語っている話だったのだなと思い出させてもらう感じでした。
アリーは巡礼の途中で出会ったある人物がきっかけで、聖地ではなく山頂を目指すことになります。
山頂で導師の影と問答を交わした翌朝、会いに行けと示された相手は死体となっていた。
閉ざされた環境で限られた人物しか存在しない場所で起きた事件現場で、アリーはある違和感に気づく。
とまあ、ここから先は伏せますが、聞き慣れない聖典の言葉や様式に満ちていながらも神を求めるアリーの心の動きは身に迫ってくるようでした。
ちょっとしたお勉強をしているような気持ちで読むのも面白かったです。
読後感としては、すごかった…!が近いかも。
(20240503投稿文の再掲)
・第17回 メフィスト賞