【読了】川本直「ジュリアン・バトラーの真実の生涯」
川本直「ジュリアン・バトラーの真実の生涯」
「ほんタメ」で紹介されていた本。
男性同士の性愛を描きアメリカ文学に多大な衝撃を与えたジュリアン・バトラー。彼の作品を世に送り出した主人公は、半ば伝説と化したジュリアンと自身しか知らないある真実を語り始める。
冒頭から引用として描き出されるジュリアンの作品は恐ろしく劇場的でエロティックで、強すぎる刺激に、これは発禁とされても無理はない…と思ってしまった。
男性同士での同居=同性愛者であるとされる時代であったり、政治家の方針で同性愛が罪とされたりと、自分の愛の向かう先を隠さねばならない状況下で自分はこういう存在であると宣言してまわるようなジュリアンは自由の権化のようにみえる一方、眩しくそして時に妬ましく思いながら彼を支えた主人公は、自分こそがジュリアンに依存していたと振り返る。
一言で表現することは難しいけれど、当時の世相の移り変わりも含め、とても興味深く面白く読みました。
惜しむらくは私にこれを読み解ける基礎教養が圧倒的になかったこと…😔
出されたものを素直に美味しくいただくことも楽しいけれど、そこに織り込まれたものを想起できれば深みが増すのも事実なのよね。
これがデビュー作とは、末恐ろしい限りです。
別の作品もぜひ読みたいと思います✨
(20230816投稿文の再掲)
・第73回 読売文学賞
・第9回 鮭児文学賞